医療IT化とPHR

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PHRとは何か?

医療のIT化の中で、EHR、EMR、PHRなど、紛らわしい略称がたくさん登場してきましたが、その中でPHR(Personal Health Records)だけは他とかなり違った種類のデータシステムといえるでしょう。

「パーソナル・ヘルス・レコード」という用語は新しいものではなく、1978年ごろには既に登場していたようですが、広く使われ始めたのはここ数年のことです。この用語もさまざまに定義されていますが、それら定義の共通項を拾い出すと「PHRとは個人の健康情報を保管するコンピュータのアプリケーションのことである」となります。

EHR(Electric Health Records)との違いですが、PHRがあくまで生活者の個人使用を前提としているのに対し、EHRは医療者の使用を前提として設計されています。EHRはカルテを含む概念なので、法的に決められ証拠能力のある記録という性格を持っていますが、PHRには別にこれという法的な規制は存在しません。ですからPHRにはさまざまな個人の健康情報が記録されており、特に決まりもありませんが、一般的には下記のような項目が記録されるようです。

●アレルギー、薬物有害反応
●薬物治療歴(一回分、頻度)、OTC(店頭売り)薬、薬草類を含む
●病歴、入院歴
●手術や他の治療歴
●予防接種
●検査結果
●家族の病歴

PHRの運営主体

PHRにはさまざまな運営主体があり、最近では顧客マーケティングの一環としてPHRサービスをネットで提供するケースが増えています。まず運営主体で多数を占めるのはWebサービス提供企業です。無料あるいは廉価でユーザーにアカウントを与え、Web上でユーザー自身に自分の健康記録を書き込んでもらいます。その際、PHRのほかに医療情報提供や相談サービスを付加するケースが大半です。

次に、米国の場合、病院がWebでPHRのサービスを提供するケースが増えています。この場合は病院側のEHRを含む統合医療情報システムの一部としてPHRが提供されます。さらに生命保険会社やヘルスプランなどが自社の顧客に対しPHRを提供する例が増大していますが、最近の調査によると、どうやらユーザー側の認知や利用率が低いケースが多く、ユーザーサービスとして解決すべき課題は多いようです。

PHRの今後

PHRのデメリットはなんといっても、ユーザーが自分で健康記録を整理入力しなければならないという「煩雑さ」でしょう。メンドウなのです。「ダイエット記録」や「運動記録」を入力できるPHRなども見かけますが、自分でまめにこれを記録・継続できるユーザーは稀でしょう。逆にメリットとしては、ユーザーが自分の健康状態に自覚的になれること。それによって日ごろの健康管理意識の向上がはかられるのでしょう。しかし、これはあくまで「タテマエのキレイゴト」に過ぎず、PHRのサステナビリティーを上げるためには、やはり何らかのインセンティブや「みんなで共有して取り組む」といった2.0的な仕組みが必要となるでしょう。

また闘病記をPHRに置くということも想定されます。どうせユーザーに記録ストレージを提供するわけですから、そこに闘病記フォームを置いて、すぐに闘病記を書けるというサービスがあれば便利でしょう。どこかやりませんか。もともと闘病記自体が「パーソナル・ヘルス・レコード」と言えそうです。

(参考資料:Wikipedia、PubMed、他)
三宅 啓  INITIATIVE INC.


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