医療関係のSNSがブームになっています。アメリカでは、このブログでもご紹介したRevolutionHealth、OrganizedWisdomに加え、DailyStrength.org、PatientsLikeMeなどが大手SNSとして多数のユーザーを獲得しています。
先月、OrganizedWisdomは1300万件のユーザービジットを達成し、DailyStrengthは12万人のユニークユーザーと2万人の会員登録を獲得したと発表しています。ここ十年間、アメリカでは患者交流メディアとしてメーリングリストが普及していましたが、MySpaceの爆発的成長に刺激を受け、患者SNSが一躍クローズアップされてきました。一方、医療者専用SNSのSermoも急速に会員を拡大しはじめているようですが、アメリカでは患者向けSNSのほうが多数ローンチされています。
逆に日本では医療者向けSNSのほうが先行しており、患者向けSNSはまだこれからといった状態です。
RevolutionHealthやOrganizedWisdomの場合、単にSNSにとどまらない検索機能などのサービスを実装し、総合的な医療情報サービスを目指していますが、患者向けSNSという機能をではどのように評価すべきなのでしょうか。まず考えられるのは安全性の確保というポイントです。これは外から来るスパムを一定遮断することと、内部のアラシ行為の監視を意味します。DailyStrenguthなどは、この安全なネット接続環境を第一のミッションに挙げているくらいです。たしかに闘病記サイトを見ていると、サイト内掲示板やコメント欄にスパム・メッセージが書き込まれるケースは多く見受けられるので、SNSという閉域内部での安全性はユーザーにとって安心できるものでしょう。しかし、閉域の短所もあります。それはせっかく書いた闘病記など患者生成コンテンツが、Googleなどの検索エンジンを通して外部からから見えないという問題です。
またSNSは主催者によるUGCの囲い込みという側面もありますから、闘病体験をパブリック・スフィア(公共圏)でオープンに共有するという意味では、何か限定された活用しかできないようなイメージもあります。闘病記はまず闘病者自身のものですが、Webにアップされた段階でそれは公共的な共同利用の対象になると私達は考えています。このあたり著作権の問題も踏まえた議論が必要になりますが、それはまた稿を改めて考察したいと思います。
三宅 啓 INITIATIVE INC.