医療事故が医療費のコストドライバー

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4月2日、米国の医療機関評価・格付け会社であるヘルスグレーズ社が米国の患者安全性調査結果を発表した。それによると米国における医療インシデント(※)は、03年から05年の間に、千人当たり発生件数で2.03件増加した。そして、トップランクの病院とボトムランクの病院の発生率の差は依然として大きい。
ヘルスグレイズ社による「米国の病院における患者の安全性調査」は、03年から05年の間に全米約5千の病院で、メディケア(高齢者向け公的医療保険)加入者のうち4千万人の入院患者のケースを調査した。

三年間に回避できたかもしれない院内死亡件数-247,662件

調査期間の三年間に、メディケア加入者患者で116万件の医療インシデントがあったことが判明。発生率は2.86%。またこの三年の間に、米国病院では避けられたかもしれない死亡件数が247,662件あった。医療過誤に巻き込まれた患者の死亡率は約25%に達する。医療事故に伴い、メディケアが余分に負担しなければならなかった過剰コストは、03年から05年の間に86億ドルであった。16タイプの医療事故のうち10タイプが三年間の調査を通じて平均約12%増加した。大幅に増えたのは、術後敗血症(約34.3%)、術後呼吸不全(18.7%)、医療ケアによる感染(12.2%)。

医療事故減少がコスト削減になる

もしも、すべての病院がトップランクの病院と同じレベルの安全性であったとしたら、206,286件の医療事故と3,393人のメディケア加入患者の死亡が避けられたかもしれない、と調査報告書は指摘している。これは17億4千万ドルの医療費節約となる。

またさらに、アメリカのトップランクの病院は、ボトムランクの病院よりも、医療過誤の発生率は40%も低いことも調査で明らかにされた。

「死亡数と費用の両面における米国病院の医療過誤のコストは、依然として重大な意味を持ちます。そしてトップレベルとボトムレベルの病院との間の、医療の質の隔たりは依然としてあります」とこの調査の主任であるサマンサ・コリアー博士、ヘルスグレイズ社医療部門責任者は言う。「全国のトップランクの病院は病院業界にベンチマークを提供してくれているのです。」

医療事故と医療費の関係は、日本で公表されたのを見た記憶はない。行政が「医療費削減」の旗を振るのであれば、上記の調査のように医療事故、医療過誤、インシデントと医療コストの関係を研究する必要がありそうだ。

※重大な災害や事故に至らないものの、直結しておかしくない一歩手前の事例。文字通り、突発的な事象やミスにヒヤリとしたり、ハッとしたりするもの。日本では「ヒヤリ・ハット」といわれている。

Source:Washingtonpost “U.S. Hospital Errors Continue to Rise”


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