テクノラティ日本のサービスが終了したらしい。ブログ検索というテーマは、私たちもバーティカル検索エンジン「TOBYO事典」開発に取り組んでいるだけに、他人事ではない。そういえば二三年前まで、よくテクノラティを利用してブログ検索していたものだが、考えてみると最近はほとんど利用しなくなった。なぜだろう。おそらくフィードリーダーなどで読むべきブログを限定して事足りているせいもあるだろうし、Googleなど他のブログ検索エンジンが精度を上げてきていることもあるだろう。そして、もう一つは、スパムブログの増大などブロゴスフィア自体の問題もありそうだ。
TOBYOは日本のブロゴスフィアを「闘病体験」という側面から見ているのだが、その過程でいくつも気になることに遭遇した。まず、偽装闘病記や単なるアフィリエイト目当てのスパムブログが大量に発生しており、汎用検索エンジンでこれらノイズを除外することは難しくなっている。次に、ブログの大衆化が急激に進んだ結果だろうが、最近、基本的なリテラシーさえ身に付けていないブログ管理者が急増している。インターネットの肝にあたるところを知ろうとせず、逆に根拠のない先入観や、自分たちだけの奇妙な風習や迷信にとりつかれて大騒ぎするような場面も見受けられる。これらを見ていると全部ではないにせよ、ブロゴスフィアが妙に閉鎖的で、身内意識が過剰、デマゴーグに扇動されやすくなっているようにさえ見える。窮屈になっているのだ。これは今に始まったことではないかもしれないが。
そしてオープンな言論というものが存在しにくくなっている。日本の場合、私的な日常雑記の垂れ流しエントリが大半を占めるから、もともと「言論」と呼べるものが少ないせいもある。
私たちはネット上に公開された闘病サイト群を「闘病ユニバース」と呼び、その過酷な体験を通して得られた貴重な知恵に敬意を表してきた。だが、医療者も驚くような物理学者戸塚洋二氏の闘病記録から、果ては極私的日常雑記の垂れ流し日記にいたるまで、闘病ユニバースもまさに玉石混淆である。
アフィリエイトやスパムのノイズを除外するために、今後ますます検索対象を限定したバーティカル検索エンジンが必要になるだろう。そしてさらにその上に、優秀なコンテンツを選び出すための仕組みとしての「評価システム」が(闘病ユニバースにも)必要になっている。テクノラティ日本のサービス終了が提起しているのは、これら二つの課題ではないかと思う。
三宅 啓 INITIATIVE INC.