オンライン診療への挑戦: American Well

AmericanWell

「インターネットによる医療サービス」と言えば、今日では医療情報サービスのことを誰しも思い浮かべる。だが、今日ではあたかも忘却されてしまったかのようだが、実はインターネット黎明期から、多くの人々によって繰り返し提起されてきたサービスがある。それは「オンライン診療の実現」である。そして、このことは何度も提起されながらも、結局、事業としては今日まで実現されていないのだ。

誰もがその実現を口にしながらも、現実には影も形もないというのは一体どういうことなのだろうか?。いろいろな要因があるとして、手短に言えば、経済的な事業スキームを誰も作ることができなかったということに尽きるだろう。実際、これに類する問題は多い。とりわけ10年前に「eヘルス」などと言われていた時期には、医療を実際に支える経済的・市場的ファクターを度外視した「バラ色未来論」が横行していた。もちろんそこでも在宅医療などオンライン診療が語られてはいたが、経済ファクターやマーケティングまで含めた視点は皆無であった。つまり技術的なブレークスルーよりも、本当は事業開発における新しいスキームづくりが必要だったのだ。

さて、ようやく今年になって「オンライン診療」サービス実現の機は熟しそうである。先頃のHealth2.0春季コンファレンスでも注目を浴びたAmericanWellだが、いよいよ本格的に稼働するようだ。昨秋、このブログではいち早く同社を取り上げたが、ここへきて米国大手医療保険各社のオンライン診療への関心が高まっている。さらに、米国医療の高コスト体質が社会的問題になっていることもあり、医療費削減の切り札としてのオンライン診療が注目されている背景もある。

以前のエントリでも指摘したが、AmericanWellが「消費者、医師、保険会社の三者からなるマーケットプレース」を提唱しているところに興味をひかれる。「コンシューマー、プロバイダー、ペイヤー」というプレイヤーが、それぞれメリットを得る仕組みをどう作るのだろうか。だが、ペイヤーを参加させたことは、「マーケットプレース」実現の上で大きな一歩となるだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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