日本の医師SNS成功事例: MVC-online

MVC

MVC-onlineは2005年夏ローンチということだから、米国Sermoよりも一年先行していたわけで、日本の医師SNSの中でも最古参の部類に属する。サイトトップページに「医師・歯科医師限定の電子会議室MVC-onlineは、MVCメディカルベンチャー会議という現実の医療実務研究会を仮想空間にまで拡張したものです。」とあるように、先行するリアルの研究会が母体となり、ウェブ上の「電子会議室」からSNSへと進化した生い立ちが、他の医師SNSとはかなり違うところである。

プロフィール(実名原則)、日記、アルバム、コミュニティ検索、招待など、SNSとしての基本機能を一通り備えているのは当然だが、コミュニティが充実しており、積極的に企業など外部との共同作業の場として活用され、製品開発等の実績も上げているとのことである。具体的事例としては、大手カメラメーカーとの「偏光ルーペ」の共同開発や、医療システム企業との「医療モール・サインボード」リニューアル作業など、医師の専門知識や経験を企業ニーズに結びつけることによって成果を上げている。

このようにこのMVC-onlineは、医師の集合知を活用した知識集約機能を具体的な成果物にアウトプットできているところが素晴らしい。またコミュニティを軸とするマネタイズの仕組みが出来上がっており、すでに採算ベースに乗っているようだ。日本における医師SNSビジネスモデルの成功事例として注目されるべきだろう。

実は先日、このMVC-onlineを運営している、株式会社メディカルプラットフォームの東野社長、大冨部長にお目にかかってお話しする機会があった。お二人とも、新しい医療サービスを開発して日本医療に新風を起こすことを志す、熱を帯びたベンチャー・スピリッツの持ち主であることがわかって、非常に頼もしく嬉しかった。

さて、医師SNSなどプロフェッショナルSNSNのビジネスモデルの要諦は、コミュニティに集積された専門知識を外部の企業・団体ニーズとどう結びつけるかにあることは、SermoやこのMVC-onlineのケースを見てもわかる。その際、やはりSNS内部の知識生産と知識共有の「量と質」という問題があると思われる。これに関し「コミュニティの中で発言してもらう、質問を発してもらうということが、実は非常にむつかしいことなのですよ」と東野社長は語っていた。まずコミュニティ全体を励起し、常にアクティブ・ユーザーの一定以上の運動量を確保しなければ、出力される知識の品質を高めることはできないだろう。そして、ことはコミュニティ・メンバーの自発性にかかっているだけに、そのマネジメントは一層困難を極めると思われる。そこのあたり、当方など外部から憶測するしかないのだが、おそらく形式知化されたミッション・ステートメントに表わされる、草創期メンバーの方々の「志」の初期熱量が決定的に重要なのだろう。そして外部ニーズを探索し、内部知識とマッチングさせる企画力と営業力も必要だが、MVC-onlineの場合、熱意と行動力ある強力な戦力があることが強みになっていると思われる。

今後もMVC-onlineに注目していきたい 。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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