医療改革キャンペーンサイト:ChangeNow4Health

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今週月曜日(11月19日)、新しいスタイルの医療改革キャンペーンサイトとして注目される「ChangeNow4Health」が、ニューヨークで記者発表されローンチした。このサイトは、アメリカの大手医療保険HUMANA社が全面的にバックアップしており、消費者、雇用者、医療提供者、医療保険など主要な医療当事者が結集し、危機的状況にある米国医療改革を推進することを目指している。

「医療制度は壊れている。それは今修理する必要がある。私たちは改革のプロセスが始まるのを、あまりにも長く待ち過ぎた。私たちは同じ道を続けて行くことはできない。医療制度は、今、根本的に変えられる必要があるのだ」。

「新しいアプローチ。確かに医療制度は壊れており、それは誰であれ一人では修理することはできない。私たち全員が役割を果たさなければならないのだ。『私たち』とはすべての医療保険や大企業の経営者であり、すべての医療提供者であり、そしてすべてのアメリカの消費者のことである。その変化の大きさは問題ではない。多数の小さな変化が、結局パワフルな何かになるのだ」。

以上のように、このChangeNow4Healthは単なる医療改革情報のアグリゲーション・サイトにとどまらず、「ウェブによる医療改革連合」のような運動体を実際に動かそうという野心的試みである。これについて、Health2.0のルーツの一つである「Open Health Manifesto」運動の主唱者であり、このサイトのモデレータとしても参画しているドミトリー・クルーグリャク氏は、

「簡単に要約すれば、これまで医療のアクセス、適正価格感、そして選択性などについて、人々の不安を煽ることによって点数を稼ごうとするような政治屋(あらゆる種類の党派所属者)が多過ぎたということだ。たくさんのロビーイスト・グループは嬉々として協調し、ワシントンにおける自分たちのパイの取り分にありつこうとしている。私はこれまで、本質的に市民のための良策を主張する政治家やロビーイストを、まだ見たことがないのだ」。

と述べ、従来の医療改革に関する諸提言が「声の大きい団体」の代理人たち主導で進んできたことを批判している。

上のスライドは、ChangeNow4Health設立の基本的考え方をまとめたものである。このスライドの最初に「私たちは非効率に浪費をしている」とのタイトルの一枚があるが、ここで米国医療費の総額とGDP比が日本と対比して掲出されている。ちなみに日本では、「日本の医療費のGDP比は、他の先進諸国よりも低すぎる」などという医療者側の論議をよく見かけるのだが、逆に米国では「米国医療費が高すぎるのだ」と見られているのである。それでは「適正水準」は奈辺にありや?。これは一概に言えない。つまり医療費の多い少ないは、基本的には相対的な議論でしかないということだ。さらに言うと適正水準はその国の当事者が決めるほかなく、他国事例はあくまでも参考情報にすぎないと見るのが妥当だろう。

さて、それでは従来の「改革運動」とこのChangeNow4Healthとは、どこがどう違うのか?。従来改革運動であれば、その主要な担い手として市民団体や患者団体がまず想起されるのだろうが、この場合そうではなく、HUMANAのような大企業がバックアップしていたり、クルーグリャク氏のようなウェブ医療改革ファシリテーターが中心になっていたりするところが違うのである。そして運動体の中心も、リアル世界の「運動本部」にあるのではなく、ウェブサイト上のコミュニティが「舞台」として存在するのみである。つまりこのChangeNow4Healthは、従来の「企業対市民」や「組織対個人」、あるいは消費者運動とか市民運動といった伝統的対立図式や運動スタイルを逸脱しており、すべてのメンバーが横一列に並んで参加するという意味で画期的であると言えるかもしれない。

今日、米国の医療改革論議の主要な舞台は新聞でもテレビでもない。主要な論議はウェブ上で展開されている。そのような状況に対応し、出るべくして出てきたのがこのChangeNow4Healthなのだろう。そして従来の伝統的な社会改革運動を超える矢印をもったこのChangeNow4Healthは、さしずめ「改革運動2.0」とでも呼べるものに成長するかもしれない。今後を注目したい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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