四月から始まる医療機関情報提供制度

医療機能情報提供の制度化

この四月から、各地域の病院、診療所など医療機関から医療機能情報を都道府県に報告し、自治体側がそれを取りまとめてWeb等で地域住民に情報提供する制度が始まります。病院の場合、報告が義務化されるのは以下のカテゴリーに属する57項目。

  • 基本情報: 名称、所在地など
  • 病院へのアクセス: 交通手段、サイトURL、メールアドレス、診療時間、面会時間等
  • 院内サービス・アメニティ: 医療相談、障害者対応、入院食、売店等
  • 費用負担等: 医療保険、公費負担、先進医療、治験等
  • 診療内容、提供保健・医療・介護サービス: 専門医、施設、診断、対応治療、セカンドオピニオン等
  • 医療の実績、結果に関する事項: 安全対策、診療情報管理、治療結果情報、患者数等

このうち2007年度に実施されるのは「基本情報」で、その他の情報提供は2008年度からになる見込みです。厚労省では1月29日まで、この制度実施に伴う医療法施行規則の一部改正案について、パブリックコメントを公募しています。

日本の医療機関の情報開示状況

自治体が運営する医療機関情報提供サービスとしては、すでに東京都の「ひまわり」のようなものも存在するわけですが、医療機関の情報がどんどん公開されることは良いことです。attentionまた従来は、医療機関についてさまざまな情報は存在しても、それぞれ、項目がばらばらで比較しにくいという問題がありましたが、国が基準を定めることによって、全国どの医療機関も同じフレームで比較できるようになりました。

ただ、アウトカム(治療結果)情報は死亡率、再入院率などデータを分析しているか、あるいはその分析結果を公表しているか、という事実確認にとどまっているようで、病院間で具体的な数値を比較することはできません。

この制度によって全国の医療機関の基礎的な情報が開示されるわけですが、日本の医療機関には、国から強制されるのではなく、もっと主体的に、積極的な情報発信とコミュニケーションをしてもらいたいものです。私たちは2003年に全国全病院のWebサイト調査を実施し、開設サイト数3700を確認しました。その際、多数の病院サイトを見た感想は、「コミュニケーション・マインドとスキルの欠如」ということでした。この原因には、長年にわたる医療を取り巻く強固な諸規制の存在があげられるかも知れません。医療機関のコミュニケーション活動は厳しい規制下におかれてきたため、その経験と技術を成熟化させる機会を喪失してきました。

逆に現実には、Webサイトを単に「広告看板、パンフレット」と見ている医療機関も少なくありません。この結果として、どの病院サイトも「理念、院長挨拶、等々・・・・」など似たようなつくりになり、地域生活者が本当に求める情報が何もないという傾向も顕著です。

海外に目を転じると、メイヨークリニックをはじめ米国の病院サイトは、生活者、闘病者に役立つ医療情報を積極的に配信し、コミュニケーションを積極的に生み出そうとしています。つまり、実際のリアル医療サービスだけでなく、情報サービスまで含めて利用者のための医療サービスを考えているのです。

遅まきながら医療機関の情報開示がやっと始まるわけですが、今後は開示サイトの運用面での、ユーザーが利用しやすい仕組みづくりが必要になってくるでしょう。私たちは、これら「官」の動きとは違う発想で、「闘病者発の医療機関情報 サービス」をTOBYOで将来実現したいと考えています。

三宅 啓   INITIATIVE INC.


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