米国ではWeb2.0系サービスが花盛りだが、医療界でこれに呼応するHealth2.0はどうかといえば、まだまだ実際にリリースされているサービスの数は少なく寂しい状況である。日本も米国も2.0のみならず、そもそもIT導入一般からして、他産業に比べどうしてこう動きが遅いのだろうか。
日本で「Health2.0!」とか言って、勝手に盛り上がっているのは、ひょっとしてわれわれだけかもしれない。そう言えば、日本で「医療分野で2.0」って言っている人って、見たことないからね。これを見ておられる同志の方があれば、ご一報されたし!。
さて、ソーシャル・ニュース・サイトあるいはニュース・アグリゲーターといえば、米国ではDiggが、日本ではニューシングが有名だが、この医療版が昨夏ごろから米国で登場してきている。その代表的サイト「バイオウィザード」を紹介しよう。
PubMedの医学論文をアグリゲート
このバイオウィザードは、Diggやニューシングと基本的な機能はほぼ同じである。ユーザーがWeb上で見つけた気に入った記事を登録し、他のユーザーがもしそれを見て気に入れば投票し、登録記事が得票の多いもの順にリストされる。すでにご承知のように、このようなシンプルな機能を提供しているのがこの種のサイトである。
バイオウィザードの場合は医療分野専門であるから、対象は普通のニュース記事ではなく、専門的な医学文献である。そのソースは米国のNational Library of Medicine (NLM)が提供するデータベースPubMed上の約1600万件に上る文献、論文である。世界最大のこの医学専門文献DBと提携しているところが、バイオウィザードの強みになっている。
リストに表示される登録情報には論文タイトル、PubMed記載ページURL、著者名、所属、カテゴリーなど基本情報のほかに、ユーザーがタグを付けコメントを書き込むことができる。
リスト表示方法は下記の三通り。
・特別論文:誰にも関心があるとみなされるに充分なユーザー得票がある論文
・トップランク:最高位の得票を得た論文
・新規登録:最近ユーザーによって登録された論文
ユーザーのメリット
バイオウィザードの提供するメリットは、最新の論文、話題になっている論文を、ユーザー(医療専門家)が見落とすことがないという点にある。特に、専門分野に特化した最新情報をさがすときに威力を発揮するとうたわれている。また、医学専門家集団の「Wisdom Of Crowds」を使って、特定医学分野からベストの論文やマストアイテムを選び出すという機能も、当然ながら具えている。
日本でもこのようなものを作るのはそんなにむつかしくないが、しかし、日本の医療専門家が直接このバイオウィザードにユーザー参加したほうが早いかもしれない。専門家であればあるほど、「言語の壁」はらくらくと越えられるのだから。