岡本太郎のベンチャー・スピリッツ

Tarou_Okamoto

竹橋の国立近代美術館で岡本太郎展を見た。悪い予感があたった。予定よりも少し遅れて、それでも午前10時過ぎに到着したのだが、すでに会場は長蛇の列だった。それでもスムーズに入場できたが会場内は大混雑。ゴールデンウィークだし、また最近テレビで岡本太郎をかなり取り上げてもいたし、ま、こんなものだろうと思った。しかたない。

しかし、たとえ大混雑の会場で作品が見にくいことがあったとしても、やはりこの展覧会を見てよかったと思った。むしろ、このような雑踏の会場こそが岡本太郎の作品には似つかわしいのではないか。

今回の展覧会では「NON」という岡本太郎の基本姿勢に焦点をあてていたが、このような「否定形」を日本人は好まないはずだ。いつ頃からか、「ネガティブよりもポジティブを!」という空気が日本を覆い尽くしてすでに久しい。だが岡本太郎のように根底から革新的な芸術表現を追求していこうとすれば、それは既存の芸術に鋭い「NON」を突きつけることになる。現にあるものをまず否定してみなければ、本質的に新しいものを作ることはできないはずだ。そのために、岡本太郎はピカソをはじめ既存芸術から日本文化までを、すべて否定し続けた。その「否定のエネルギー」たるや凄まじいものだし、またそれを終生継続したこと自体がすごいことだ。

われわれベンチャー企業もまた、既存システムに追従し、妙に分別ぶってみたところでたかがしれている。それよりも「この新しいアイデアで世界を変えてやる!」とギラギラした不遜な野心を抱き、現存するシステムに鋭い「NON」を突きつけることがなければ、何の存在価値もないだろう。そんな「ギラギラ感」の大切さを、この岡本太郎展であらためて学んだ気がした。ギラギラした絵が一杯の展覧会だった。こんなに常にリスクを取る方に身を置こうとした表現者が存在したことに驚いた。

展覧会場の終わりに、岡本太郎の言葉を記した「おみくじ」を抽くコーナーがあった。抽いてみるとこんな岡本太郎の言葉があった。

人生に命を賭けていないんだ。だからとかくただの傍観者になってしまう。

また妻が抽いたおみくじにはこうあった。

下手のほうがいいんだ。笑い出すほど不器用だったら、それはかえって楽しいじゃないか。

うーむ、ベンチャー関係者必見の展覧会だ。会期は残すところあと少し、お見逃しなく。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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