在宅医療を望む患者とケアギバーのマッチングサイト:ENURGI

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住み慣れた自宅で医療を受けたいという患者ニーズは極めて大きい。最近、たとえば前インテル会長のアンディグローブ氏などが米国医療改革に積極的な提言をしているが、氏の改革案の中でも第一番目に位置づけられているのが「高齢者をできるかぎり在宅で治療する」ことであり、これを氏は「シフトレフト」(下図)というコンセプトにまとめ上げてさえいる。

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確かに病院に入院して治療を受けるよりは、在宅治療の方がコスト削減につながることは明白であるが、良質でリーズナブル、しかも近隣地域に存在するケアスタッフの調達がこれまで患者側のボトルネックであった。そこに着目したのが患者とケアギバー(看護師、セラピスト、家庭保健師)のマッチングサービスENURGE。これはDoability(実行可能性)とCost Effective(費用効率)を重視するアンディ・グローブ氏が、まさに待ち望んでいたサービスだろう。

「ENURGEは革命的なウェブベース医療サービス会社である。それは地域で(ケアギバーを探している)家族や患者を、全国の臨床ケアギバーと結びつける。ENURGEは患者・家族そしてケアギバーに、オンラインのスケジューリング、メッセージング、紹介状、そして直接支払業務を通じて、それぞれケアプロセスを管理できるようにする。

ENURGEは全国の在宅医療サービスの流通を変革しつつある。ENURGEは、在宅医療を望む患者家族のために、臨床ケアギバーのデータベースを作った最初の企業である。」

つまり、患者家族側には直接ケアギバーを探し、雇い、管理し、支払うことを可能にし、ケアギバー側には近隣地域での仕事のブッキング窓口を提供するという、両方に喜ばれるマッチングビジネスなのである。

ターゲットは当然、患者家族とケアギバーとなるが、他に雇用者も加えられている。なぜ雇用者かというと、従業員の家族にケアが必要な人がいる場合に、それを支援するためである。それぞれのターゲットに対してウェブ上でコミュニティ機能が提供されており、ユーザー同士の経験を共有する仕組みがあるところが2.0的である。

このサービスが他のHealth2.0サービスと異なるのは、その主たる提供機能が流通変革に関わる機能であるという点であろう。中間項を排除し「買い手」と「売り手」を直に結びつけるという意味では、オークションサイトに似ているのかもしれない。ただ、問題は医療保険の適用である。「ここから買ったもので、しかも特定のサービスについてしか保険は適用できない」など、限定的かつ硬直的に制度設計された医療システムの場合、流通変革は起きにくい。起こす「自由度」と、起きる「余地」がないのだ。

アンディ・グローブ氏の医療改革提言には、「リテール・クリニック網の拡充」など医療流通変革の提言も盛り込まれているが、制度全体の社会的コストを低減する場合、流通回路を変革することは極めて有効な手段である。その際、流通回路の変革とは、一般的に回路の「短縮と多様化」に帰着するはずだ。

ENURGEは、流通変革を目指すHealth2.0サービスとして注目される。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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