「リアルの補完物」からの飛翔

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RevolutionHealthの失敗に端を発し、先週から米国ブロゴスフィアで始まった「Health2.0論争」だが、収拾するどころか一層燃え広がる気配である。論点は徐々にHealth2.0のビジネスモデル問題へと移動しつつあるようにも見えるが、これはいくら議論しても仕方ないかもしれない。とにかく誰が見ても納得できる成功事例が出現するまでは、どんな仮説でも主張できるからである。アイデアを持っている人間は、議論のためにそのアイデアを検証するよりは、現実にそいつを実行すべきだろう。

ひるがえって日本の現状に目を転じると、こちらは「論争」さえ起きる気配もなく、Health2.0と目されるサービス自体が少ない。何回も繰り返すが、もっといろんなチャレンジが出てきてもよいのではないか。たとえば患者SNSなど、なぜ出てこないのか不思議だ。その一方では、リアルの患者会などがむやみに持ち上げられることが多いようだが、この傾向にも首を傾げざるを得ない。現実には、実質的に政治団体や宗教団体などが運営する「患者会」もある。また内紛を抱える患者会も少なくない。運営や財務が不透明で、責任の所在があやふやな任意団体であるケースも多い。患者会も玉石混淆状態なのだ。マスコミなどはこれまで患者会を無条件賛美してきたが、その中身は千差万別である。一度その実態を厳しく検証してみるべきだろう。今後、その信頼性や運営実態の観点から、患者会を客観的にレーティングするサービスが必要になるかもしれない。

さて、PatientsLikeMeなどを見ていると、従来のリアル患者会にはない新しい患者同士のリレーションやコミュニケーションを確かに実現しているように思える。これは従来の患者会と対立したり競合したりするものではない。同じコミュニティ領域で競合するのではなく、従来の患者会のブラインドサイドを患者SNSは埋めている。これらは両立可能なのだ。

だがHealth2.0は、すでに先行するリアルサービスの単なる補完物ではない。これまでのリアル医療サービスでは実現できなかった新しいユーザーベネフィットを創造することが、その目的なのだ。だから、従来の患者会の延長線上に患者SNSはないのである。同様に、従来の書籍版闘病記の延長線上に闘病サイトはない。「従来の闘病記」を超えたものとして闘病サイトがあることに気づくところから、われわれのTOBYOは出発したのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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