患者が医師や病院を格付けし評価するウェブサイトは、米国で多数出現したが、とうとう看護師が医師を格付けするサイトがローンチした。CareSeekコンソーシアムの一員であるNursesRateDoctors.comは、日頃から一番身近に医師を見ている看護師による医師レビュー情報が、患者がより良い医師を探すときに役立つのではないかと考えてスタートしたようだ。
現在、NursesRateDoctors.comは全米の看護師に参加を呼びかけ、集団で百万件の医師レーティング&レビューを書くキャンペーンを実施している。今年実施された調査によれば、看護師の76.8%が医療提供者をレーティングしたりレビューしたりする意思を持っており、46.4%が看護師仲間にそれを薦めたいとしている。それらレーティング&レビュー参加の理由は、91.3%の看護師が「公共の利益になる重要な情報だから」、92.8%が「いくつかの素晴らしい病院を称賛する機会だから」としている。
「医師に関する情報よりも、iPhoneに関する情報のほうがたくさん利用できるくらいだ」とCareSeekの創立者ゲール・ウイルソン・スティールは今のウェブを評して言う。「医療提供プロセスの中で、患者は最も重要な参加者なのに、伝統的に医療のコミュニケーションや情報は、まだ患者に焦点を合わせられていないのだ。ある意味では我々すべてが患者なんだが、適切な情報へのアクセスなしに、我々は良い医療消費者にはなれないんだ」。
「NursesRateDoctors.comは、医療プロフェッショナルと共に毎日働いている看護師から、生の情報を患者に提供する。このツールで、看護師は多数の医師(良い医師も悪い医師も)に関する意見や見方を共有することができる。すべての医師がすべての患者に合うとは限らない。そしてある意味で最良の医療パートナーを探すということは、医師の臨床的専門知識と同じく、医師の持つスタイルや現場エチケットについてもより一層理解することだ。看護師は医師と日々の交流を持つのみならず、患者と一緒に彼らを現場で見ているのだ」とゲール・ウイルソン・スティールはこのサイト構築の背景を述べている。
またサイトには次のようなステートメントが掲出してある。
医療におけるより良い関係づくり
CareSeekは医療における問題解決を助けている。その問題とは、はっきり言えばステークホルダー間におけるオープンなコミュニケーションの欠如である。良いアウトカムと同じく、良いビジネスは信頼できる透明な関係性に基づいている。CareSeekはソーシャルネットワーキングやレーティングやレビューのモデルを使い、コミュニケーション障壁を越え、医療を改善するために、内部ステークホルダー関係構築を開始する。
多数の細分化された医療ニーズを持つユーザーに個別の体験を提供するために、CareSeekは個人をエンパワーし、ユーザーの思考や体験を言葉にする確かなウェブ・ソリューションを創造する。そして同時に、医療と医療提供者に関するユニバーサルな知識ベースを構築する。CareSeekコンソーシアムの最初のメンバーはNurseRateDoctors.comで、ここでは看護師が匿名で医師を格付けし評価することができる。このサイトは、患者の医療提供者探しを助けるのに欠かせない巨大な情報貯蔵庫を作っており、そしてそれはCareSeekコミュニティに共有されている。
Health2.0とは、言ってみれば、これまでの医療に存在しなかったような新しい関係性と情報流動性を作り出すムーブメントである。このことを、このNurseRateDoctorsは改めて教えてくれたような気がする。
「新しい関係性」とは、まず「患者-患者」、「医師-医師」、「看護師-看護師」など同一レイヤーにある関係性のパワーアップであり、次に「患者-看護師」、「患者-医師」のようなクロスレイヤーにおける関係性の新たな創出である。これら新しい関係性の励起の中で、既存レイヤーの権力関係や権威序列が崩れていく予感がある。
看護師が医師を格付けするという事態を、一体これまで誰が想像できたであろうか。ウェブがなければ、このような発想は絶対に現れなかっただろうし、ましてそれを実現することなど不可能だっただろう。
NurseRateDoctorを加え、どうやらCareSeekは、患者、看護師、医師の三者をネットワークするサービスを目指しているようだ。きわめてユニークなアイデアに拍手を送りたい。
Source:Business Wire,September 18, 2007
三宅 啓 INITIATIVE INC.