ブログ統計:TOBYOがんチャート、Analysis

TOBYOがんチャート

今年もまた炎暑の夏が来た。石神井公園では例年に比べ、蝉の数が少ないような気もする。今月はTOBYOの新規コンテツ「TOBYOがんチャート」開発に取り組んでいた。また、9月からリリースするプロフェッショナル向け闘病ブログ統計「Analysis」の準備も進めている。この二つを開発する上で、闘病ブログのスキャン技術の精緻化が必要となったが、これは時間をかけ経験を蓄積し、今後も改善を積み上げていくほかない。

「TOBYOがんチャート」は7月の早い時期に公開すべく開発を進めてきたが、予想以上に様々な問題が出てきて、計画は大巾に遅れてしまった。それでもここ2~3日中には公開できそうだ。まだアルファ版であり、今後、少しづつ改良を加えていく。また、「患者が話題にしていることTOP20」ランキングを医療機関、薬剤。検査・治療の3ジャンルで公開するが、どうも「TOP20」では食い足りない気もする。今後、TOP30とかTOP50へと拡大することも検討したい。

さて、このようなクチコミ・ランキングを提供するのは、これまで患者の声を定量的に可視化する試みが少なすぎたと思えたからである。患者がネットで公開する闘病ブログなどドキュメントは、これまで「闘病記のネット版」とみなされてきた。だから、どうしてもそれらの一本一本をストーリーとして順次的に読むという接触態度が一般的であり、公開された膨大な患者体験の集積を数量化し、その全体を統計的に解析するという方法が開発されてこなかった。

つまり、闘病体験のそれぞれを「物語」として分離固定化し、それら集積が全体として何を言わんとしているかに関心を払ってこなかった。 もちろん、そもそも闘病ブログというものが非構造的で不揃いな質的データであるという事情もそこにはあった。

私達も「非構造化データにある程度秩序を与える」ぐらいのことは当初から考えていたのであるが、全面的に質的データを統計的に扱うことには躊躇があったことも否定出来ない。 しかし、昨年春頃には「質問票のないアンケート調査結果」として闘病ブログをとらえ、ブログ記述から逆に「質問」を再現するような方法で、数量的にデータを捉えようというアイデアが生まれた。ここから試行錯誤を繰り返し、紆余曲折を経て、結局、「ブログ統計」というシンプルな落とし所へと、私達の問題意識は収斂してきたわけである。

そして、9月リリース予定の「Analysis」にはシンプルに「ブログ統計」というフレーズを付すことになった。私達が現在めざすところは、患者ブログ全体を数量的に解析した結果を社会へ配信することである。このことによって、個々のストーリーではなく、全体として患者ブログがどんなことを主張しているかを統計的に可視化したい。

まずは「ランキング」というプリミティブな形式で、「患者が話題にしているコト」をわかりやすく提供したい。「TOBYOがんチャート」と「Analysis」は、当初、まったく別のプロジェクトとして想定されていたのだが、結局、「ブログ統計」というコンセプトの二つの表現形態であり、根っこで通底していることが徐々に明らかになってきた。

というわけで「TOBYOがんチャート」。最初はアルファ版から出発するが、徐々に完成度を上げ充実させていきたい。乞うご期待。

三宅 啓  INITIATIVE INC