製薬会社の医療アプリ専門紹介サイト: POCKET.MD

POCKET.MD

海外では、製薬会社や医療機器会社からスマートフォンやiPad向けの医療アプリが多数リリースされているが、とうとう専門紹介サイト「POCKET.MD」まで出現した。世界の主要製薬会社のブランデッド・アプリがほぼ網羅されており、またブランドごとにアプリが分類されているので便利なサイトだ。

ここで紹介されている日本語アプリはエーザイのipad向け「骨ケア」だけだが、そう言えば国内製薬会社のアプリというのはあまり聞いたことがない。しかし、たかがアプリとバカにはできない。消費者向けの医療アプリは疾患啓発サイトに代わるDTCメディアになる可能性があるし、医師向けアプリは医師囲い込みやディテーリングのツールに利用される可能性もある。要するにマーケティングのダイレクト・チャネルとして有望なのだが、日本ではあまり積極的に利用しようという機運は起きていないようだ。規制の問題がはっきりしないこともあるのか。

一方、増加する製薬会社の医療アプリをにらみ、米国FDAは昨夏、規制ガイドライン・ドラフト“Draft Guidance for Industry and Food and Drug Administration Staff – Mobile Medical Applications”を発表している。

オンライン医療サービスはこれからますますモバイルへ傾斜していくだろうが、その際アプリの戦略的位置づけというものを考えておくべきだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

事業領域の再考をめぐって

shinjuku_gyoen_lunch前回エントリで触れたが、現在、dimensionsで開発した技術をB2Cモデルへ転用した「乳がん闘病クチコミCHART」(仮)の実用化に取り組んでいる。できれば4月から運用を始めたい。考えて見れば、dimensionsは企画立案からシステム運用までほぼ2年かかったわけだが、ここで開発した技術は単にdimensionsというシステムにとどまるものではなく、さまざまな応用領域へ展開できるものである。

当初はあまりそんなことを考える余裕もなく、ひたすらdimensions(旧名dfc)の設計概要を固め機能を実装することで手一杯だった。それでも予定を大幅に超える時間を要したのは、このような未踏プロジェクトを進める以上、ある意味やむを得ないことだと思っていた。そして出来上がってみると、dimensionsという「ソーシャル・リスニング・ツール」が完成したというよりは、それ以上の大きな価値が実現できたのだとの感を次第に強く持つに至っている。

私たちが、dimensions開発の過程で取り組んだ技術は要約してしまうと以下の三点である。

  1. データ取得(クロール、本文抽出、日付取得、DB化)
  2. リスティング(キイワード抽出、集計、カテゴリーリスト化)
  3. バーティカル検索エンジン(新規エンジン採用、疾患ごとのバーティカル検索、メタデータによるフィルタリング)

いずれもきわめて基本的なものであるが、データ精度や処理速度を実用レベルに持ってくるのに随分苦労した。だがこれらの技術によって、私たちは闘病ユニバース上にある膨大な闘病ドキュメントをデータとして自由自在にハンドリングできるようになった。ここが非常に重要なポイントだ。dimensions自体も、これらの技術の組み合わせのうちの「一つのフォーム」ということにすぎない。つまり、これらの技術の組み合わせ方によって、闘病ユニバースからさまざまなアウトプットを取り出すことが可能になったのである。 続きを読む

厳寒に酷暑を想う (原点回帰と路線修正への序章)

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今が一年で一番寒い時期だろうか。この寒い毎日に、半年前に記録的な酷暑があったことを思い出すことは難しい。だが私たちはあの8月の暑い日々の最中に、実はある一つのアイデアを作っていた。しかしそれは、その後、実現へ向け着手されることもなく放置されていた。そして半年たって、偶然にもそのことを思い出す時が来たのである。

今月初めに「天啓」とも言うべき持病の痛風発作が来て自宅蟄居を余儀なくされたが、これはここ半年ばかりのTOBYOとdimensionsの事業展開について振り返る良い機会となった。なんとなく漠然と、この2月に「転機」のようなものが来るだろうとの予感があったが、まさに痛風をきっかけとして従来の事業戦略を修正することになったのである。そして、たまたま半年前のアイデアを思い出したことも大きい。

昨年夏、酷暑の真っ只中にポストした8月15日付エントリ「新サービス『闘病CHART』: 患者話題ランキングとバーティカル検索の連動」 においてdimensionsの応用編ともいうべき新サービスを素描しておいた。エントリをお読みいただければわかるように、このサービスは闘病者(患者、家族、友人他)をユーザーとして想定している。できればB2Cを目指したいところだが、B2B2Cという形もありうる。一方、dimensionsではB2Bモデルを目指してきたが、これは既にご利用いただいている契約ユーザーもあり、当然このまま継続し、引き続きサービスの改善とサポートに努めたい。

だが、私たちの起業原点は「患者のエンパワーメント」にある。ここへ再び回帰しなければならないとの気持ちが強い。それはHealth2.0にも言えることだ。Health2.0は製薬業界のためにあるのではない。Health2.0は「患者のエンパワーメント」のためのムーブメントである。その原点に戻る必要を最初に意識したのは、昨年秋の「Health2.0 Tokyo Chapter3」に参加して、残念ながら割り切れない空虚な気持ちで会場を後にした時だった。 続きを読む

医療ビッグデータ・マーケティングの地平へ

Network from Michael Rigley on Vimeo.

このクールなアニメーションは、カリフォルニア美術大学のMichael Rigley氏の制作によるもので「情報可視化アニメーション」(Information visualization Animation)と呼ばれているらしい。(※このビデオは残念ながら削除されたようだ)(再注:その後、ファイルは復活し再生可能になっている)

今月18日でTOBYOは四周年を迎えるが、ローンチ以来一貫して取り組んできたことは「ネット上の闘病体験の可視化」、すなわち「データの可視化」ということに他ならない。そうやって3万3千サイト、450万ページのデータをひたすら可視化しDB化してきたわけだが、今後もこれは私たちの活動のベースになるだろう。

TOBYOプロジェクトは、いずれ5万サイト、さらには10万サイトの数千万ページあるいは数億ページを可視化する日が来るだろう。そして数千万ページ、数億ページのデータを可視化できたとき、私たちは現代の日本人が病気と医療にどう向き合って、何を思い、どのような暮らしを送っているかを、空理空論としてではなく、データに基づいて正確に細部まで具体的に知ることができるようになるだろう。そしてそれらの傾向を抽出することによって、医療についての日本人の「一般意思」を可視化し、検討することができるようになるだろう。私たちが究極的にめざしている到達点はそこにある。 続きを読む

医療とゲーミフィケーション: HealthTap


昨年から、あちこちで「ゲーミフィケーション」という言葉を目にする機会が増えてきている。この言葉を手っ取り早く理解すると、以下のようになる。

ゲームデザイン手法や仕組みを用いて問題の解決やユーザー契約などを獲得すること。例えば、既存のシステムやサービスへの、ポイント性、順位の可視化、バッヂ、ミッション、レベルシステムの採用など。さらにゲームの要素を盛り込むことによって楽しみながら意図せずそれらと関わっていってもらうことが目的で行われる場合もある。(wikipedia:ゲーミフィケーション

このゲーミフィケーションの手法を医療Q&Aサービスに導入したのがHealthTapである。このサービスが普通の医療Q&Aと異なる点は、ゲーミフィケーションの仕組みを回答者である医師参加者に適用している点にある。

HealthTapに参加した医師は謝礼や換金可能ポイントなどは与えられないが、そのかわり回答数、医師同士の”agree”評価、一般ユーザーの”thanks”評価などのポイントを競い、獲得ポイントによってさまざまな「賞」を贈られたり、自己の評価ステータスを示す「レベル」を上げたりすることができる。

また、HealthTapでは医師の参加モチベーションを上げるために、以上のようなゲームライクな競争の仕組みを用意するのみならず、医師個人を可視化し、ウェブ上の医師プレゼンスを高め、同じ地域の患者への認知促進をはかるなどの「販促効果」もあるとしている。これらの「メリット」にひかれてか、現在、医師参加数は約9000人を数え、毎日100人づつ増加しているとHealthTapは発表している。 続きを読む