新サービス「闘病CHART」: 患者話題ランキングとバーティカル検索の連動

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暑い。日本全国、夏休み。それでも熱く仕事は続く。熱気を帯びて湯気の出るアイデア創発も続く。冷蔵庫で美味しそうにゴロンと冷えているビールとスイカが力源だ。

先月サービスインしたdimensionsは、おかげさまで早速各方面から強い関心とお声がけを頂戴している。ところで先日エントリ「dimensionsの基本フレーム」 でも触れたが、実際にシステムを運用ベースにのせてみると、かなりのリソースが必要になることが分かってきた。特に全体としてデータ処理のスピードアップが求められるため、目下、従来のリソース・システムを組み替え、新システムへ移行中である。

さて表題の「闘病CHART」であるが、これはdimensions開発の成果を、今度はTOBYOや他の患者向けサービスへ転用しようというものだ。たとえば「乳がん患者が話題にしている薬品ベスト20」、「アトピーの患者が話題にしている治療法ベスト20」、「胃がん患者が話題にしている病院ベスト20」など病名別チャートを設置し、チャートインしたアイテムをクリックすればバーティカル検索をかけ、即座に薬品名など各アイテムについての患者の体験とレビューを表示するサービスだ。

これは、dimensionsのディスティラー(Distiller)が実現しているキイワード抽出およびリスティング機能に基づいている。ディスティラーでは病名ごとに上図のようなリストを作っているが、ある時、このリストを見ながらその意味を考えているうちに、これが患者がネット上で言及している「薬品、治療法、医療機関、検査・機器」分野それぞれの話題ランキングであることに気づいた。

これらのランキングはTOBYOのサイト属性データをベースとしており、特定病名ごとの患者ドキュメントを正確に切り出すことができる。つまり、たとえば乳がんの患者だけ、肺がんの患者だけ、関節リウマチ患者だけの話題薬品ランキングを最新チャートとして提供できる。そしてこのチャートとTOBYO事典を組み合わせることで、チャートインした個別アイテムの患者体験検索が即座に可能となる。 続きを読む

TOBYO、闘病ユニバースの3万サイト可視化を達成

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TOBYOの可視化闘病サイト件数は、本日(8月10日)、3万件を達成した。自己の貴重な闘病体験をネットに公開してくれたすべての闘病者の皆さんに、この場をかりて深い敬意と感謝の念を表したい。

インターネットが始まるとほぼ同時に、闘病者は自発的に自己が体験した事実をネット上に公開し始めた。それらを読んで自分の闘病の参考とした者が、続々と今度は自分の体験をネット上に公開した。そしてさらに後続の闘病者が・・・というように一種の闘病体験のリレーがネット上で自然発生的に起きたのだ。その結果、ネット上には夥しい量の闘病体験が蓄積され、やがてそれらはオープンでルースな、まさに「自律、分散、協調」を地で行くネットワークをゆっくりと形成していった。

TOBYOプロジェクトを企画する前段階で、私たちはこの自然発生的なネットワークの存在に気づき、後日それを「闘病ユニバース」と名付けた。当時を振り返ると、TOBYOプロトタイプに到達するまでに、私たちの前には複数の選択肢があった。その中のひとつは、いわゆる闘病コミュニティや患者SNSをつくるというものだった。だがすでに「闘病ユニバース」という巨大なネットワークが存在する以上、新たな闘病コミュニティをつくる必要はない。そして、これからコミュニティ=コンテンツ生成場を作ってコンテンツを集めるのではなく、すでにあるものを集めたほうが確実で早い。それに患者コミュニティなるものがそう簡単にワークするものではないことも、米国の状況などを研究してなんとなく分かっていた。 続きを読む

自発性、回答者A、不揃いなる事実

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dimensionsで扱うデータは、私たちが闘病ユニバースと呼んできたウェブ上に公開された闘病者のドキュメントである。これらのデータはどのような特徴を持っているのだろうか。患者アンケートやヒアリングなど他の患者ソースのデータと、どこがどのように違うのだろうか。

TOBYOプロジェクトを開始するに当たって、私たちは闘病記というものを改めて考察するところから出発し、ウェブ上の患者ドキュメントの性質をさまざまな角度から見てきた。その過程で、まず従来のリアル闘病記、つまり本としてパッケージ化された闘病記とウェブ上の闘病ドキュメントの差異を考えざるを得なかった。しばしば「われわれはネットから医療を見ている」という言い方をしてきたが、実はこのような考え方は、リアル闘病記とウェブ闘病ドキュメントの差異認識に由来するものである。だがこのことについては、後日、あらためて論じる機会があると思う。

さて、ウェブ闘病ドキュメントと患者アンケートやヒアリングなど患者調査データとの違いであるが、まず一番大きな違いは、なぜそのようなデータが作成されたのかをめぐるデータ生成の動機である。ウェブ闘病ドキュメントはあくまで闘病者自身のため、すなわち純粋に「自分のために書く」ことが動機になっており、それは闘病者自身の内発的な自発性だけに依拠している。対して患者調査では、データ生成動機は闘病者の内部には存在せず、リサーチャーやモデレータなど外部の第三者が闘病者とは無関係に作成した調査目的に依存している。
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