2010/05

ロシア構成主義のまなざし

2010/05/06 木曜日 - 20:34:48 by 三宅 啓

rodchenko

(左:「これよりよいおしゃぶりはない。年をとるまで吸いたくなる。」 1923年、ゴムトラスト広告ポスター、ロトチェンコ、マヤコフスキー、右:「あらゆる知についての書籍」1924年、レンギス広告ポスター、ロトチェンコ、マヤコフスキー)

寒い4月が終わると、今度は初夏の5月が始まった。極端な天候の行方に戸惑ってしまう。TOBYOプロジェクトもしばらく小休止し、久しぶりに休暇をたっぷり楽しんだ。とは言え、別段どこへ出かけるわけでもなく、ただ近隣を散歩し、自宅で本を読み、音楽を聞く時間を過ごしただけである。妻と映画館や美術館にも足を運んだが、たまたま見た「ロトチェンコ+ステパーノワ ロシア構成主義のまなざし」(東京都庭園美術館)がよかった。

20世紀初頭のロシア・アヴァンギャルド芸術の展覧会は、日本でも過去何回か大きなものが開かれたが、結局、一度も足を運ぶことはなかった。それはかつて「政治の革命と芸術の革命」などと学生時代に語っていたテーマを、再び直視することの気恥ずかしさのためではなかったか。私の卒論指導教官であり昨年亡くなったM先生は、日本のロシア・アヴァンギャルド芸術研究の中心的存在であり、学生の私たちはその周辺でさまざまにロシア文学やアヴァンギャルド芸術を語りあっていた。

だが、やがて「政治と芸術」という古典的な図式で物事を考えることに、私たちはどこかの時点で飽きてしまったと思う。「スターリン体制に圧殺されたアヴァンギャルド芸術」というドラマチックな図式にもだ。何故かと言えば、これらの図式は新しい世界観を何も生産することはなく、それ以降の歴史からも切断された重苦しいアポリア以外に存在のしようがないからだ。そこからどのような出口もなく、ただ滅入るような停滞があるのみだ。 »もっと読む・・・ »

医療機関サイトの品質と医療ウェブの成熟度

2010/05/09 日曜日 - 22:56:56 by 三宅 啓

ここ二三日、必要があっていくつかの病院サイトをあれこれ調べている。病院サイトのつくりだが、以前よりはだいぶ改善されたように見えるが、まだまだサイト内導線やUI、情報配置などユーザーに対する配慮は不足していると言わざるを得ない。特に初診案内のわかりにくさは致命的だ。病院で診察を受けようと初めて訪ねてきたユーザーに、もう少していねいな気配りがあってもよいのではないか。特に診療日時や受付場所など、きわめて基本的な情報が不備であるケースが多いのだ。それに対して、相変わらず院長挨拶とか病院理念などを麗々しく配置しているのを目にすると、医療機関のコミュニケーション・マインドはまだまだ低いと言わざるを得ない。

医療機関ウェブサイトの品質を上げることは、依然として大きな課題である。たとえば「ユーザーが選ぶわかりやすい病院サイト、ベスト100!」などコンテストを設けてみるのもよいかも知れない。TOBYOで病院サイト評価&投票を呼びかけてみようかとも思う。医療評価の一環として、もうすこしサイト評価が注目されても良いのではないか。 »もっと読む・・・ »

病院検索サービスの再検討: 医療機関バーティカル検索エンジンのすすめ

2010/05/11 火曜日 - 11:55:30 by 三宅 啓

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昨日、実はある大学病院の脳神経外科で検査を受けていた。MRIに30分も閉じ込められ、「ドカン、ドカン、ギーッ!」という物凄い機械音に驚かされた。これまでMRIの体験記録などたくさん目にしてきたはずだが、いや、こうまですごい騒音とは・・・・・。閉所恐怖症の人にはとても耐えられないだろう。何事も実際に体験してみないことにはわからないものだ。

幸い、検査の結果は「異常なし」でホッとしたのだが、今回、医療機関サイトをあちこち眺め回したり調べたりして、いくつか気づくところがあった。そのうちの最たるものは、「必要な医療機関情報へダイレクトに辿り着けない」ということである。GoogleやYahooの検索エンジンではゴミやノイズが多すぎる。そこで医療機関検索サービスを利用することになるが、それらサービスの大半は、まず「部位、診療科目、地域」など大分類から選択を始めさせ、何段階か選択を進めた結果、やっと目指す情報にたどり着くような仕組みになっている。

これはユーザー側で予め検索対象情報が明確になっている場合、非常に迂遠な方法であり、ユーザーに時間と手間を強いるものである。つまり探索経路が硬直的であり、しかも最短ではないのだ。特に一刻を争うような場合には、使い物にならないだろう。 »もっと読む・・・ »

Web3.0

2010/05/12 水曜日 - 11:51:16 by 三宅 啓

Web 3.0 from Kate Ray on Vimeo.

次世代ウェブの行方について様々に語られているが、このビデオはティム・バーナーズ・リークレイ・シャーキー、デビッド・ワインバーガーなど名だたるビジョナリーの発言をコンパクトにまとめあげている。この手のビデオとしては秀逸の出来だ。

このビデオを見ながら思い出したのは、先日パリで開催されたHealth2.0ヨーロッパ・コンファレンス冒頭に上映されたプレゼンスライドのことである。同じくウェブをテーマとして、同時期に作られた映像素材でありながら、なんと違うことか。Health2.0も、次世代Webのビジョンをもっと意識すべきかもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

徹底討論『光の道は必要か?』

2010/05/14 金曜日 - 11:44:18 by 三宅 啓

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昨夜の「孫正義vs佐々木俊尚 徹底討論『光の道は必要か?』」は面白かった。夕食後、8時過ぎからUstreamで見始め、結局12時までお付き合いしたのだが、トークセッションが終わったのは深夜1時だったらしい。なんと延々5時間。このセッションの概要は「光の道 テキスト中継ログ #hikari_roadhttp:」ですべてテキスト化されている。

全体を通してみれば、両者の議論は咬み合うように見えながら微妙にすれ違っていた。どこですれ違っているかといえば、インターネットの現状と将来をめぐる孫氏のハード・インフラ至上論と佐々木氏のプラットフォーム優位論においてである。たしかに全国津々浦々に国費ゼロで「光の道」を整備できれば、それはそれですばらしいだろう。だがそのことによって、自動的に日本のインターネットが飛躍的に活性化されるかといえば、そうではないだろう。今日、われわれが実感しつつある日本のインターネットをめぐるある種の閉塞感と言うものを考えると、それはインフラが光かメタルかという問題とはまったく次元が違うと思う。

「インターネットを使わない」理由だが、これを見るとネットの普及が進まないのは料金の問題よりも他の要因の方が相対的に大きいことがわかる。つまりは固定回線のネットを利用することにさほど魅力が感じられていないのだ。もちろん都市部のデジタルネイティブな国民の間では、ブログやTwitterなどのソーシャルメディアやさまざまなリッチコンテンツを楽しむ文化ができあがってきているが、しかしたとえば地方の高齢者などにはそういう文化は比較的伝わりにくい。本来そうした層に送り込むべきインターネットのサービスは、たとえば健康管理やセキュリティといった、もっと生活に密着したサービスだ。
「ソフトバンクの「光の道」論に全面反論する(下)」  佐々木俊尚)

最近、「日本の医療ウェブの成熟度」ということを考える機会が多いのだが、たしかに日本の医療インターネット分野において、生活に密着した便利な医療サービスの数は驚くほど少ない。欧米に比べると、日本のインターネット医療サービスの貧困という現状は否定できない。そしてこのことは「光の道」の達成、つまりインフラ整備の問題とはほとんど無関係である。 »もっと読む・・・ »

DFC(Direct From Consumer )開発進行中

2010/05/17 月曜日 - 18:07:46 by 三宅 啓

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先週の「光の道」徹底討論を見て、日本の医療ウェブのことを考えさせられた。孫さん、佐々木さんのお二人とも、医療が日本のインターネットの次の大きなテーマだという点では一致していたが、医療ウェブの現状を考えてみるとそこには非常にお寒い現実がある。なぜこうなのか、と昨年あたりから考えてきたが、その原因はある意味ではっきりしているのではないかと思う。なぜ、日本ではPHRのような医療プラットフォームの発想が出てこないのか。なぜ、日本ではWebMDのようなシンボルポータルがないのか。なぜ、・・・・・なのか。挙げだすとキリがない。

これまでもこのブログではいくつか問題の在処を指摘してきたが、これからも日本の医療ウェブの抱える問題を提起していきたい。だが、私たちは評論家でも学者でもない。あくまでTOBYOプロジェクトという事業と実践を通じて、現実を変えて行くことにプライオリティを置いている。

まずDFC(Direct From Consumer)だが、仕様はほぼ決定し要素技術の検討に入っている。これはTOBYOプロジェクトの柱となる商品であるから、なるたけ早期に、できればここ3ヶ月くらいで完成してしまいたい。また商品の完成を待たずに、先行してクライアント獲得のための働きかけにも着手していきたい。当面、獲得すべき顧客としては、製薬企業、調査会社、研究機関その他を想定している。 »もっと読む・・・ »

TOBYOトップページのワイド化と広告掲載

2010/05/18 火曜日 - 19:09:08 by 三宅 啓

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今週から、TOBYOトップページをワイド化する。これによって各種告知や広告などのスペースが生まれる。今後、TOBYOプロジェクトが持続的に展開していくために、DFCをはじめ広告や各種機能提供によって、どんどんマネタイズを進めていきたい。 »もっと読む・・・ »

医療プラットフォームとしてのPHR

2010/05/19 水曜日 - 20:26:10 by 三宅 啓

思い返すと五年前、ティム・オライリーはあの歴史的な文書「Web 2.0:次世代ソフトウェアのデザインパターンとビジネスモデル」の中で、Web2.0の戦略ポジショニングとして次のように述べた。

 Web as platform.

Web2.0のもっともシンプルな定義ということになると、この戦略ポジショニングの他にはないだろう。そして「プラットフォームとしてのウェブ」をどのように有効に機能させるかをめぐり、その後さまざまな分野で多数のサービスが立ち上げられたと言えるだろう。

医療分野ではどうか。ながらく医療ITで語られてきたのは、EMRやEHRなど医療プロバイダー側のシステムがメインであり、「プラットフォームとしてのウェブ」を活用しようというような発想は存在しなかった。そして、ようやくPHRがGoogleHealthやHealthVaultのような具体的な姿をもって登場してから、はじめて「プラットフォームとしてのウェブ」ということを医療においても考えることができるようになったのではないだろうか。

しかし、ともすればこれまで当方もふくめ「EMR、EHR、PHR」と一緒くたに並置して見ることが多く、たとえばEHRとPHRの区別さえ不分明になりがちであった。現にヨーロッパでは、政府が構築したEHRを同時にPHRとみなしているケースが多い。だが「プラットフォームとしてのPHR」という観点から見みるならば、それらの区別は非常にはっきりしてくると思える。

また、従来の「EMR、EHR、PHR」というシステム並置は、ある意味で情報システムの発展段階を順序付けているように見える。この順に、システムが連続発展するようなイメージが暗示されているように見える。だがEMRとEHRはともかく、PHRはそのような連続性の延長にあるのではなく、まったく異質な存在として見るべきだろう。それはまずウェブ上に存在する点、そして消費者側のシステムである点で、従来の医療情報システムとは異質である。そしてそれは、EMRやEHRなどさまざまな情報経路から流入してくる個人医療データをストックし、そこからさまざまな医療サービスへ向けてフローさせるためのプラットフォームなのである。 »もっと読む・・・ »

始まった日本のHealth2.0ムーブメント

2010/05/21 金曜日 - 21:33:26 by 三宅 啓

health2.0

昨日、メドピア株式会社の石見社長と比木取締役がお見えになり、来る6月4日に開催されるHealth2.0 Tokyo Chapterのお話を伺った。これで日本においても、ようやくHealth2.0ムーブメントが公然と姿を現すことになるわけだ。

昨日もお話したのだが、思い返せば2006年秋から翌年春にかけて、サンフランシスコ周辺でBarCampやHealthCampなど数多くの医療とウェブをテーマにしたアンカンファレンスが開催されていた。当時、私は東京からそれらの動向を関連ブログや共有サイトなどで毎日チェックしていたのだが、それは前年2005年に爆発したweb2.0ムーブメントが、必ず医療にも波及するはずだとの確信めいた思いがあってのことであった。

活発な議論が交わされる中で、それら無秩序な動きは自然発生的にいくつかのグループを形成し始め、やがて「Health2.0」というシンボルワードのもとへと流れ込み、大きなムーブメントが生み出されていくのを興奮しながら見ていたのである。当時の様々な論争については、このブログの初期エントリに記してあるので、興味のある方はお読みいただきたい。

結局、2007年春にマシュー・ホルトが「この秋、第一回Health2.0カンファランスをサンフランシスコで開催する」と発表し、以後、今日に至る流れができたわけだ。あれから三年が経ち、いよいよ日本でもHealth2.0ムーブメントが始まる。そう思うと、非常に感慨深いものがある。この「TOBYO開発ブログ」は、TOBYOプロジェクト開発の理論構築をめざして設けられたのだが、偶然にも米国におけるHealth2.0ムーブメントの胎動期に逢着し、その誕生と発展をリアルタイムに記録紹介することになったのである。 »もっと読む・・・ »

900回目のエントリに寄せて

2010/05/24 月曜日 - 18:29:03 by 三宅 啓

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当ブログは900エントリに達した。ところで、前回エントリ「始まった日本のHealth2.0ムーブメント」を書きながら考えたのは、ある意味でこのブログの役割は終わったのかもしれないな、ということだ。このブログはかなり早い時期から世界のHealth2.0動向をとらえ、様々な事例を紹介してきた。だがそのムーブメントが日本で動き出し、たくさんの人々が直接参加するようになるのなら、ことあらためてHealth2.0を紹介する必要もなくなるだろう。

それに以前に比べると、たしかにHealth2.0の具体事例がニュースとして紹介されるケースは減ってきているように思える。これはこれまで既に多数の事例が紹介されたため、Health2.0のニュースバリューが漸減してきているということもあるだろうが、一方では斬新なサービス自体の登場が少なくなっていることも事実だ。特に成功事例という点では、SermoとPatientsLikeMeの次が今ひとつ思い浮かばない。たしかに23andMeやkeasは有望株だが、しかしまだ顕著な成功を収めているとは言えない。 »もっと読む・・・ »