ハイパーリンクからソーシャルグラフへ

ここ一週間ばかりの間に、FacebookがGoogleを抜いて次世代ウェブの覇者になるのではないかとのニュースや論評(「Facebookはついに次世代ウェブの主導権を握ったのではないか?」TechCrunch  )が立て続けに米国から届いた。現在Facebookは急拡大しており、すでに会員ユーザー数月間ユニークユーザー数は5億人に迫ろうという勢い。そして先週発表されたソーシャル・プラグインなどオープン化施策によって、Googleに代わりウェブ・インフラの地位を奪取する戦略が明確になってきた。たしかにFacebookは最大のソーシャルグラフ保有者であり、この点でGoogleに対し優位に立っている。

今回発表されたソーシャル・プラグインによって、外部のサードパーティーはFacebookのデータを使い簡単に新しいサービスを生み出すことができるようになる。たとえば、Facebook内の闘病体験データをアグリゲートし、病院や医師のレーティング・サービスが生まれる可能性がある。またFacebookが新たに導入したLikeボタンによって、ウェブ上の医療情報、医療サイト、さらにリアルの医療機関に至るまで、簡単にクチコミ評価情報を集めて提供することも可能になる。従来のハイパーリンクに基づく検索サービスよりも、より的確な情報をソーシャルグラフをベースとしたサービスは提供できるだろう。 続きを読む

「善意」ではなく、イノベーションの方へ

Drucker_Innovation

4月とは思えない寒い日が続いたが、今日は明るい日差しがたっぷりの爽やかな一日だった。今月は痛風のためほとんど断酒状態で過ごしたが、晩酌をやめると読書にたっぷり時間が取れるのがいい。このまま酒を断つのも悪くないと考えるようになった。

発想が煮詰まりプロジェクト進行が停滞したときは、とにかくまったく関連性のない分野の本を読むにかぎる。別に「何かヒントを掴んでやろう」などと考えずに、ただひたすら思考を別の方面へ向け、そして存分に楽しむことだ。そうすれば、また新鮮な興味を持って仕事を始められる。

TOBYOプロジェクトは今年に入って急速に前進したと思う。収録サイト件数が2万件まで来たこともあるが、いろいろな意味でプロジェクト全体の方向性が視界良好になった。何よりもDFCというキイワードによって、B2Bビジネスが明確になったことが大きい。これによってプロジェクトの事業ドメインがはっきりし、投入する商品を特定することができるようになったわけだ。 続きを読む

TOBYOプロジェクト、DFC-Distillerの新展開

既にツイッターではお知らせしたが、来月中旬頃にTOBYOのトップページ・レイアウト変更を考えている。いささか窮屈になってきたのでワイド化に取り組むのだが、現状デザインのルック&フィールは変更しない。まだまだTOBYOはブランド浸透を図らなければならない段階にあり、視覚アイデンティティを継続してブランド・パーセプション構築に努めなければならない。

今回のワイド化によって告知、ウィジェット、広告など新しいコーナーを設置することになる。特に広告枠をはじめプロモーション・スペースが確保できるので、今後、さまざまなご要望にお応えできるだろう。各方面からどしどしリクエストを頂戴したい。

さて、TOBYOプロジェクトのB2B事業であるDFC-Distillerだが、ようやく徐々に仕様が固まってきている。今月中に仕様最終決定の上、来月から開発に入りたい。ブランド・ネーミング、ロゴ、マークなどシンボル系制作も開始するが、「distiller:ディスティラー」(蒸留器)というワードは何らかの形で使いたい。 続きを読む

闘病記をマネタイズする方法

eBook

現在のTOBYOプロジェクトの焦点はネット上の闘病記録すなわちデータにあり、もはやパッケージとしての「闘病記」に対する強いこだわりはない。いわゆる闘病記パッケージに関することは、闘病記屋さん達に任せればよい。そう考えている。

それでもキンドルやiPadの出現によって電子書籍が現実のものになってみると、パッケージとしての闘病記をめぐる状況もこれまでとは大きく変わってきている。闘病記を出版したいと考えている人達にとって、自分の闘病記を出版しマネタイズするチャンスが訪れているからだ。

「電子書籍の衝撃」(佐々木俊尚、ディスカバー携書)は電子書籍の現下の状況をレビューしつつも、その背景をなす文化的、社会的イシューに目を配り鋭い考察を提出している。本論ではないが、脇に周到に配された記号消費終焉論などもたいへん面白く読めた。さて、本書第三章「セルフパブリッシングの時代へ」だが、ここで紹介されている方法で、近々日本でも闘病記をセルフパブリッシングする人が出てくるだろうと思った。 続きを読む

医療事実の蒸留器としてのDFC

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DFC(Direct from Consumer)開発に取り組む過程で、TOBYOプロジェクトの役割というものをあらためて考え直す機会を持つことが出来たのは幸いだった。これまでプロジェクトミッションは「ネット上に存在するすべての闘病体験を可視化する」と定義してきたのだが、さらにもっと直截で具体的な表現を用いるとすれば「医療事実の蒸留器(distiller)」とでも呼べるかも知れない。

まずTOBYOは、ネット上に多数存在するスパムサイトや偽装サイトなどのノイズを除去し、自発的に公開された闘病記録を含むサイトだけを収集してきている。つまりGoogleやYahooのような汎用検索エンジンに比べると、よりクリーンな情報ソースだけを検索することが可能だ。これはバーティカル検索の強みである。

だが一口に「闘病体験を含むサイト」と言っても、闘病記録がほぼ100%を占めるようなサイトからわずか10%程度のサイトまで雑多なバリエーションがある。私たちが2万件を越えるサイトを見てわかったのは、むしろ闘病記録よりも日常雑記の方が全体として情報量は多いということだ。育児、教育、仕事、趣味、旅行、時事など、多彩な日常記録が公開されており、その中の一部分として闘病記録が収載されているのが普通である。 続きを読む