懐かしい未来


このビデオは1950年代にカイザー・ファウンデーションで作られた「未来の夢の病院」イメージだ。「患者記録は事前にドクターの手元に届く」とのアナウンスで、患者記録ペーパーがプラスティックの筒に入れられパイプに投げ入れられる模様が紹介されている。そう言えば昔、国会図書館でこれと同じ「通信手段」が使われていたのを見たことがある。当時としては先進的な館内連絡方法だったのだろう。

だが、何といっても驚かされるのは「赤ちゃん抽斗」ではなかろうか。母親のベッドサイドにある「抽斗」から、無造作に赤ちゃんが取り出されるのにはびっくりした。父親が待合室でタバコをふかしているシーンも、今日からみれば違和感が強い。

およそ60年前の「未来医療」イメージはどこか懐かしい雰囲気を漂わせながら、それでいて別世界を覗いているようなカルチャーギャップを感じさせる。このいわく言い難い微妙な「ずれ」感は、60年後の「未来」から見ている我々の視線によって生じているのだが、さらに我々を未来から見ている「背後の視線」に気づくと同時に、どのような時代のどのような「未来像」にも常にこんな「ずれ」感が生起することを教えている。

三宅 啓