二月の終わりの雑感

二月も今日で終わり、明日から三月。TOBYOプロジェクトはDFC商品化の取り組みを開始している。昨年末からTOBYO事業化フレームをまとめ上げてきたが、それも細部の具体化とテスト運用の段階に来た。

TOBYOプロジェクトのミッションは「ネット上のすべての闘病体験を可視化する」ことであるが、DFC商品化などはこのミッションをさらに次のフェーズに進化させることを要請しているのかもしれない。次のフェーズとはおそらく「可視化した闘病体験によって医療を可視化する」ということになるだろう。単に個人の体験を可視化するだけでなく、さらに医療の構成要素(医薬品、機器、治療法、医療機関等)を複数の体験によって可視化するようなイメージである。

その際、どうしても「闘病体験のデータ構造」の考察が重要になる。それについても先週、私たちはかなり前進することができた。いずれにせよ「闘病ユニバース」と私たちが呼んでいる知識と体験の集合体から、どのように役に立つデータをdistillするかが問題だ。 続きを読む

ワイヤレスな未来医療


今週、Intel、GE、MayoClinicが共同して在宅医療実験プロジェクトに取り組むとの発表があった。これまで「遠隔医療-在宅医療」の実験プロジェクトは米国でも日本でも数え切れないほど立ち上げられたが、さしたる成果もあげられずにいつのまにかフェードアウトしていった。今回の三者共同プロジェクトは、対象者が高リスクを持つ高齢慢性疾患患者と発表されており、これまでの遠隔医療プロジェクトとは若干趣が違うようだ。

ところでこれまで「遠隔医療」と言えば、ほとんどが「在宅医療」のことを意味していたわけだが、ここへ来てこれまでの固定観念をくつがえす新しい考え方が提起され始めている。それは「計測センサー→スマートフォン→医療機関」のような新しいデータ経路を持ち、場所と時間にとらわれない常時モニタリングを可能にする遠隔医療システムである。計測センサーとスマートフォン間はBluetoothでワイヤレス接続され、スマートフォンがセンサーとネットを結ぶ拠点となるわけだ。 続きを読む

固定観念を疑え

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ひとくちに「インターネット医療サービス」といっても、実際にそれを存続可能な形で運営していくのは容易ではない。そのことはインターネット初期から今日まで、日本の医療分野のインターネットサービスの消長をざっと眺めてみればわかることだが、それでも実際に体験してみなければわからないことも多い。TOBYOの場合も「おそらくこうだろう」とあらかじめ予測のつくこともあったが、まったく予想外の展開も多かった。

だがなんといってもTOBYOのようなプロジェクトは、国内にも海外にもどこにも似たものがなかったので、ある意味で気楽に思いきったことができたのではないだろうか。「ビジネスモデル」という点では当初からいろいろな人から質問を受けたが、「まぁ、いわゆる広告モデルです」みたいなゆるい話でお茶を濁してきたのである。だがそのうちに、「アクセス向上→媒体価値向上→広告獲得」のような通常誰しも思い描くストーリーだけでは、おそらく医療分野ウェブサービスの成立を支えることはできないだろうと思い至った。 続きを読む

PHR-EHR連携イメージと診療文書標準の行方


HealthVaultやGoogleHealthなどのPHRと医療機関側のEHRがどのように連携して医療データをやりとりするか。このビデオは「MS Surface」上でのHealthVaultと病院EHRのデータ連携をわかりやすく示している。診察時に患者がPHRのIDカードを、医師がEHRのIDカードを「MS Surface」のディスプレイ上に置くと、PHRとEHRから自由に医療データを呼び出したり保存したりできるようなる。

ところでこのように両システム間でデータをやりとりするようになると、相互のデータ記述標準規格(診療文書標準)が問題となる。HealthVaultで採用しているのはCCD(Continuity of Care Document)という標準書式だが、GoogleHealthは当初CCR(Continuity of Care Record)を採用していた。CCRは、古い規格である「HL7-CDA」に対抗して作られた標準書式だが、今日、米国医療IT界では徐々にCCDが優勢になってきており、今後、診療文書標準になっていくものと見られている。そのせいか、GoogleHealthもCCD対応を表明している。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

DFC商品化の方向性: DFCレポート、DFCライブラリー

DFC_library

TOBYOプロジェクトは現在、DTC(Direct to Consumer)とDFC(Direct from Consumer)の二方向で商品化を進めているが、DFC先行で商品イメージを固めつつある。先日エントリでも少しふれたが、DFC商品概念を思いっきり単純化すれば以下のような式になる。

(データ) × (ソリューション) = (DFC商品)

つまり「データ」を一定とすると、「ソリューション」の深さと幅によってDFC商品はいくつかのバリエーションを持つ。当面はそれを二つに限定して整理しておきたい。

A. ジェネラル・ソリューション対応: DFCレポート→DFCライブラリーB. カスタム・ソリューション対応: 個別レポート

「A.ジェネラル・ソリューション対応」は医療関連業界の汎用的なデータニーズに対応するもので、医療関連領域の個々の「固有名詞(製品名)」に対し、対応する患者体験を集約していくことになる。たとえば医薬品をとってみると、個々の薬品名ひとつひとつについて、それらを実際に体験したユーザーの体験レポートを作成するようなイメージを描いている。当面は慢性疾患(高血圧、高脂血症、糖尿病)医薬品、抗がん剤、抗うつ剤等から100品目程度選び出し、それぞれ個別の患者体験レポート(DFCレポート)を作成していくことになるだろう。 続きを読む