2009/12

新しいビジネススキームへ

2009/12/02 水曜日 - 17:38:47 by 三宅 啓

Shinjuku_091202

12月になった。振り返ってみると、今年は年明けから年末まで、とにかくバーティカル検索エンジン開発と闘病サイトデータ収集にかかりきりで1年が過ぎたような気がする。それだけTOBYOプロジェクト全体にとって、それらが占める役割は大きいということだが、それにしても検索エンジンの開発テンポは、かなり遅れ気味である。

「ネット上のすべての闘病体験の可視化と検索可能化」を目指すTOBYOプロジェクトだが、昨年2月アルファ版公開以来、とにかく愚直にデータ蓄積を進めてきて、収録闘病サイト数も1万8千を越えた。そのうち今月公開する改良版TOBYO事典では、1万4千サイト、約290万ページが可視化され検索可能となる。

ネット上に存在する闘病サイト3万(推定)に比べると、まだその6割程度をカバーしているにすぎないが、それでもかなりの分量のデータが蓄積できた。そしてようやく、このデータの価値を活かす段階に来たと考えている。この間、かつて4年前にティム・オライリーが述べた次の言葉

Data is the next “Intel inside”.

を常に念頭に置いて、ひたすらデータ蓄積につとめてきたが、いよいよこれから、今後のTOBYOプロジェクトにとって最も重要なコアの一つとなる部分の企画&開発に取り組む。 »もっと読む・・・ »

どうして医療ソフトウェアがタダになるのか?

2009/12/03 木曜日 - 17:30:00 by 三宅 啓

FREE話題の書「フリー <無料>からお金を生み出す新戦略」(クリス・アンダーソン)を大変興味深く読んでいる。医療関連のケーススタディとしては、このブログでも紹介した「無料EHR」のPractiseFusion社が取り上げられている。

2007年11月以降、サンフランシスコに拠点を置く新興企業のプラクティス・フュージョン社の無料ソフトウェアに、数千人の医師がサインアップして、電子カルテと医療業務管理ツールのシステムを利用している。そうしたソフトウェア製品は通常5万ドルはする。なぜ同社は電子カルテシステムを無料で提供できるのだろうか?(同書、139ページ)

この問に対する答えは次のようなものである。

データを売るほうが、ソフトを売るよりも儲かる

医師一人当たり250人の患者を受け持つとすれば、最初のユーザー医師2,000人から50万件の医療データが集められる。このデータを匿名化し医学研究機関に売ると1件あたり50ドルから500ドルで売れる。もしも1件あたり500ドルであれば売上総額は2.5億ドルになる。これは医師2,000人に対し、5万ドルのEHRシステムを売って得られる1億ドルよりも大きな収入である。また、PractiseFusion社のEHRはAdSenseなど広告掲載タイプが無料、広告なしタイプが月額使用料100ドルという「フリーミアム+広告」モデルであり、この両者からの収入も加算されるわけだ。 »もっと読む・・・ »

メンタルヘルスSNS: Mental Health Social

2009/12/04 金曜日 - 19:21:45 by 三宅 啓

MentalHealthSocial

メンタルヘルス患者、関係者、業者を対象としたSNS「Mental Health Social」が今月からローンチされた。標準的なSNS機能を一通り揃えているが、ターゲットをメンタルヘルスに絞りこんだこと以外に、これという新機軸は無い。

2006年のDailyStrengthから始まり、米国ではここ二三年の間に多数の医療SNSが登場したが、それも一通り出尽くした感がある。PatientsLikeMeとSermoのめざましい躍進がある一方、昨年発覚したDailyStrengthの行き詰まりと身売り、今年5月のTruseraの撤退など、医療SNSシーンは徐々に明暗をわけはじめている。イスラエルのiMedixなども、英語圏を中心に国際的な集客をしているのだが、今ひとつ伸び悩んでいる。 »もっと読む・・・ »

二つの医療コアデータ

2009/12/07 月曜日 - 19:53:33 by 三宅 啓

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今月でこのブログも開設三周年を迎える。いや、とにかく時間のたつのは早い。三年前の2006年12月のエントリタイトルを改めて見てみると、やはり「闘病体験の共有」や「闘病記の考察」など、TOBYOプロジェクトのコンセプトを固めるために書かれたものが多い。

これまで何度も書いてきたが、私たちはTOBYOプロジェクトにたどり着く前に、ピッカー研究所の調査メソッドをモデルに「患者体験調査」システム開発を模索していた。患者が実際に体験した事実に基づいて医療機関を評価しようと考えていたのだが、この「患者が実際に体験した事実」というものが、わざわざ新たに調査するまでもなく、既にブログや個人サイトの「闘病記」として大量に公開されていたのである。つまり調査システムを新たに開発する必要はなく、既にネット上に存在する体験ドキュメントを参照すれば済むことに気づいたわけである。

このように思い返してみると、私たちは最初から調査データという側面で闘病体験ドキュメントを捉えてきており、それは今日にいたるまで変わっていない。その後このブログでは、「闘病記」という括りで闘病体験ドキュメントを見ることから徐々に離れていくことになる。「闘病記」というリアルパッケージのメタファーでのみウェブ上の闘病体験を捉えるとすれば、新しい医療サービスの創造などは見えず、むしろ「闘病記」の評論や研究や出版サービスなどの方向へ進むことになっただろう。むろん、闘病記の評論や研究などは自由であり、否定するつもりはない。だが、私たちが進む道はそれらではないのだ。 »もっと読む・・・ »

ソーシャルノミクス: Socialnomics

2009/12/08 火曜日 - 19:45:21 by 三宅 啓


「ソーシャルメディアのROI」と題されたソーシャルノミクス(ソーシャル+エコノミクス)PRビデオ。この夏に紹介した「ソーシャルメディア革命」の続編である。ソーシャルメディアを使用した様々なマーケティング事例が紹介されているが、医療関連では、米国の乳がん撲滅活動団体として知られる”Susan G. Komen“とテキサス大学MDアンダーソンがんセンターのケースが短く取り上げられている。

MayoClinicをはじめ海外の先進的医療機関は、本格的にソーシャルメディアの広報活用に乗り出しているが、日本ではまだそのような事例はまったく聞かない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

開発シーズとしてのコアデータ

2009/12/09 水曜日 - 19:11:23 by 三宅 啓

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新バージョン「闘病体験バーティカル検索エンジン=TOBYO事典」の公開はずいぶん遅れているが、これは新しいクローラーの開発に時間がかかったことと、将来へ向け大量のデータを処理できるように検索システムの分散化を図ったためだ。バーティカル検索機能を持つだけなら他の選択肢もあるのだが、少々時間はかかっても、自前の検索エンジンを持つことは、TOBYOプロジェクト全体において最も重要な開発ポイントであると考えている。

闘病体験情報は医療のコアデータの一つであるが、ユーザーはバーティカル検索エンジン=TOBYO事典によってこのコアデータを縦横無尽に検索できるようになり、闘病者が病気と戦うための情報探索労力は一挙に軽減されるだろう。私たちはまずこのことを目指している。 »もっと読む・・・ »

コアデータから事業を切り出す

2009/12/10 木曜日 - 19:23:18 by 三宅 啓

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ブログを書きながら事業構想を練る、などということは10年前には考えられなかった。だが、現にこのブログで3年間「あーだ、こーだ」と思考実験を繰り返し、試行錯誤を経て自分たちの進路を決定してきた。振り返って過去のエントリを読み返すと、ヨタヨタと不確かな足取りで、時には寄り道や袋小路に迷いながらも、なんとか前進してきたという感が強い。

そして昨日のエントリで、ようやく様々な問題に一応の決着をつけられたのではないかと自分では思っている。「あれもやりたい、これもやりたい」状態を整理し、「TOBYOはこれだけを目指すべきだ」という結論にたどりついた。「ネット上のすべての闘病体験を可視化し検索可能にする」とのミッションは不変だが、「バーティカル検索エンジンをベースにして、コアデータから医療評価&医療情報サービス事業を切り出す」という事業戦略が加わったわけだ。

この事業戦略の後半だが、具体的には「テキストマイニングと闘病サイト支援」の二点が肝になると考えている。今後具体的に固まり次第、発表していきたい。

三宅 啓  NITIATIVE INC.

闘病サイトと闘病記

2009/12/11 金曜日 - 19:27:01 by 三宅 啓

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昨日のエントリに記したように、今後、TOBYOプロジェクトは闘病サイト支援事業を何らかの形で立ち上げたいと検討をはじめている。端的に言ってしまえば、私たちが焦点化しているのは「闘病記」ではなくて、インターネットで闘病サイトを運営している闘病者たちだ。

たしかに、闘病サイトには「闘病記」と呼ばれるコンテンツが掲出されているだろうが、両者の関係は

闘病サイト = 闘病記

ではなく、

闘病サイト > 闘病記

であるはずだ。

別の表現をすれば、私たちはたとえば「e-Patients」と呼ばれるようなネットで情報武装された新しい患者像とその行動に注目している。彼らを「闘病記の作者」として見るのではなく、「闘病サイトを活動拠点とするネット闘病者」として見るべきだと考えている。

つまり私たちは、今医療に起こりつつあるまさにネット的な現象と、ネットによってエンパワーされた新たな闘病者像とに関心を持っている。そして、彼らがもっと便利に活動出来るようなツールや、彼らの発した声がもっと広く力強く社会に届くような仕組をTOBYOプロジェクトで実現させたい。

もはや彼らは単なる「闘病記作者」ではなく、もっとアクティブな存在であり、医療全体を変えるパワーを持ち始めたのだ。そこを積極的に評価しなければいけないと思う。

三宅 啓  NITIATIVE INC.

闘病サイトとライフログ

2009/12/14 月曜日 - 19:56:15 by 三宅 啓

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先週の続きになるが、「闘病記」という括りから、闘病サイトで展開されている闘病者の一連の活動を分けて考える必要がある。従来そこがどうも一緒くたにされてしまい、「闘病記の亜流」みたいな形で闘病サイト上のコンテンツが扱われてきたことが、結局、今ネット上で起きている闘病者の新しい情報活動を見えにくくしているのだ。リアル闘病本の延長線上で闘病サイトを見てしまうから、医療に対するインターネットの可能性と闘病者の活動を過小評価してしまうのだ。

インターネット黎明期から出現しはじめた闘病サイトは、同時に誕生した病院など医療機関サイトや製薬企業サイトよりも、いわゆる「ネット的な性格」を強く持っていた。病院サイトなどがトラディショナル・メディアの発想つまりワンウェイ思考で作られていたのに対し、闘病サイトは自分の医療体験をライフログとして記録し、不特定の「誰か」との共有を想定して公開されたのである。そこには、最初からインタラクティブなコミュニケーションが前提されていたのである。 »もっと読む・・・ »

TOBYOプロジェクトの現状と将来

2009/12/15 火曜日 - 19:10:44 by 三宅 啓

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昨年2月、TOBYOアルファー版を公開したとき、いろんな人から感想や質問をいただいたが、それらは概ね次のようなものだった。

「闘病記の単なるリンク集か?」、「ブログランキングみたいなもの?」

これら私たちに向けられた当時の感想や疑問は皆、ごもっともなものであった。だがごもっともなゆえに、いちいち反論するつもりもなく、私たちは闘病ユニバースを可視化するために、ひたすらメタデータを付けながらネット上の闘病体験データを分類整理していった。闘病ユニバースのコアデータを十分に集めることによって、ようやくTOBYOは次の段階へ進むことができるからだ。いずれにせよ、TOBYOプロジェクトの最下層にあるのはデータ・レイヤーである。 »もっと読む・・・ »