読売新聞の医療サイト「yomiDr.」(ヨミドクター)

yomidr先月29日、読売新聞は医療・介護・健康情報サイト「ヨミドクター」を開設した。新聞社の医療情報サイトはこれまで各紙が展開してきているが、この「ヨミドクター」はいくつかユニークな特徴を打ち出している。なかでも「病院の実力」は「病院選びの強い味方」をキャッチフレーズに、アウトカム情報に一歩近づいた医療評価データを提供しており注目される。

全国約3,000病院の独自調査をもとに、病名と地域を選ぶことで、病院ごとの患者数や手術件数、専門スタッフなどが一覧で見られるサービスです。データを自由に並べ替えることができ、地方発の病院情報もネットで初めて提供する目玉コーナーです。(プレスリリース「読売新聞が、頼れる・役に立つ医療サイト「ヨミドクター」をオープン」より)

これは上の画面写真のようなスプレッドシート形式で、病名・疾患ごとに病院の治療状況を一覧比較できるもの。画面写真はおそらく「乳がん」治療の実施状況の画面だろうが、全摘手術から温存療法までの各治療法構成比率を、病院間で比較することができる。これまで、単に手術件数を病院ごとに集計するムックなどはあったが、この「病院の実力」はそこからさらに踏み込んで、詳細な病院ごとの治療状況を提供している。 続きを読む

ブログ衝動

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これがこのブログの802件目のエントリとなる。いつの間にか800エントリを越えていたのだが、そういえばこのブログも来月3周年を迎えることになる。「TOBYO開発ブログ」の名の通り、このブログはTOBYOプロジェクトを開発するためにアイデアやニュースを書き留めたものである。そのうち既に実現したものもあるし、まだ実現のめどが立たないものもある。

しかし、プロジェクト開発のための覚書きと思考実験のためだけにブログを書き始めたのではなかった。その事に先立って、「書く」という行為の方へ自分を衝き動かしたものがあったはずなのだ。あるいはそれを「ブログ衝動」と呼ぶことができるかもしれない。今にして考えてみると、800エントリを書かせた「ブログ衝動」とは、ある種の「違和感」であり「苛立ち」であったと思う。そしてその違和感や苛立ちは、医療界およびその周辺で語られる言説に対するものである。 続きを読む

闘病体験専門検索エンジン「TOBYO事典」の今後

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闘病体験専門検索エンジン「TOBYO事典」だが、改良版の公開が遅れている。クロールは既に終了しているのだが、データをチェックしてみると当初目標に対して達成度がやや不十分であり、修正と今後の作業方針など検討している。TOBYOプロジェクトのミッションは「ウェブ上のすべての闘病体験を可視化し検索できるようにする」ことであるが、これを最も早く確実に実現するための方策を考えている。

現時点で想定しているのは、複数の検索エンジンをTOBYOに装備することだ。現状のTOBYO事典のような闘病ユニバース全体を見渡す検索エンジンは必要だが、他方、各疾患別に特化した検索エンジンを複数設置する必要があると考えている。たとえば「がん疾患グループ」専門の検索エンジンとか、「メンタル疾患グループ」専門の検索エンジンなどを設置し、闘病者の個別ニーズにより一層特化し、きめ細かい情報検索ができるようにしたい。闘病者の情報ニーズは、闘病一般とか医療情報一般についての情報にではなく、特定疾患の特定症状についての情報を指向している。つまりその情報ニーズは個別化し細分化しているのであり、それに対応した情報提供が求められていると思う。

TOBYOは現時点で805疾患を収録しているが、もちろんこれらすべてに特化した検索エンジンを設置することはない。おそらく、疾患をいくつかの「疾患グループ」にまとめることになるだろう。来春稼働を目指したい。

これらのことを通じて、よりクリーンでニーズにきめ細かく対応した情報検索、あるいはより実践的に闘病に役立つ情報検索を実現し、GoogleやYahooなど汎用検索エンジンとの一層の差別化を図っていきたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

医薬品の検索連動広告規制に対するGoogleの提案

先週、米国FDAが医薬品ネット広告規制についての公聴会を開催した。FDAはこの春、製薬会社14社に対し、Googleなどの検索連動広告を使っての医薬品広告が、法律が定めるリスク情報表示を含んでいないと公開書簡で警告した。その後、FDAはインターネットとソーシャルメディアにおける医薬品のプロモーション活動に関する政策決定へ向けた検討を始めているが、今回の公聴会はその一環である。

この公聴会でGoogleはプレゼンテーションをおこない、FDAの意向に沿う新しい検索連動広告の標準テンプレートを提案した。Googleによれば、春以降、FDA書簡による指導によって、医薬品の検索連動広告は大幅にクリックスルーレートを落としているとのことである。

どうやらFDAは、これまで「グレーゾーン」であった医薬品の検索連動広告やFacebookなどのSNS内広告の規制に本格的に乗り出すようだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

Googleがインフルエンザワクチンのファインダーツールを公開

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GoogleはHHS(米国保健社会福祉省)と協同し、GoogleMapを使って、新型インフルエンザと季節インフルエンザのワクチンを接種できる場所を探すツール「Flu Shot Finder」を公開した。郵便番号か都市名を入力すると、周辺地図に赤と青の注射器マークがマッピングされる。赤は季節インフルエンザ、青は新型インフルエンザ、そして赤青混在は両方のインフルエンザンのワクチン接種拠点を示している。

上図はシカゴ周辺のワクチンマップだが、通常の医療機関だけでなく、MinuteClinicのようなリテールクリニックやWalGreensなど薬局量販店などもワクチン提供拠点になっている。なお、このワクチンマップはまだ全米の20州しかカバーしておらず、また各拠点のワクチン在庫情報表示も遅れがちだということだが、HHSから最新情報の提供を受けて漸次改善していくそうだ。

これは先に公開されたアウトブレークマップと共に、すぐに役立つ便利なサービスだ。これまで医療情報システムと言えば、何か重厚長大でべらぼうにお金のかかるシステムを想像しがちだったが、実際には、こんなふうに状況に機敏に対応する小さくて軽いサービスこそが必要なのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.