参加型医学(Participatory Medicine)

e-Patients

昨年あたりから「参加型医学」(Participatory Medicine)という言葉が散見されるようになったが、今年になって米国で参加型医学協会が設立され、来月10月21日からオンライン・ジャーナル「Journal of Participatory Medicine」が刊行される。これはオープンソースの「Open Journal Systems」で編集された電子ジャーナルで、「医学文化をもっと参加型のものに変える」ことをミッションとして、かなり学術的な観点から「患者の医療参加」を研究発表する場として機能するようだ。

この参加型医学協会の母体となったのは「e-Patients.net」 http://e-patients.net/ だが、この団体は以前からそのユニークな活動で知られており、最近はHealth2.0コミュニティとも連携しはじめている。そのせいか、「Journal of Participatory Medicine」のアドバイザリーボードにはアダム・ボスワース、エスター・ダイソン、デヴィッド・キッベなど、Health2.0コミュニティの主要メンバーが名を連ねている。

ところで「e-Patients.net」で以前公開された「e-Patients白書」では、次のような「患者駆動医療:七つの仮説」が掲げられている。これは「参加型医学」の基本原理ともいえるものだが、なかなかに興味深い。 続きを読む

闘病体験配信の多様化: GoogleBooks、Twitter、ビデオ

googleBooks2

TOBYOプロジェクトが目指しているものについて、これまで様々な観点からこのブログでは言及してきたのだが、あらためてシンプルに言ってしまえば

「ネット上のすべての闘病体験ドキュメントを分類整理して可視化し、すべての人が簡単に利用できるようにする」

ということになる。これをめざすべく、私たちはこれまでネット上約1万7千件の闘病サイトや闘病ブログを可視化し、そのうち約1万サイトを横断的に全文検索できるようにした。今後も、ネット上に約三万サイトはあると推定される闘病サイトを、最終的にはすべて可視化していくことになるが、最近、個人サイトやブログだけでない闘病体験の配信が出現してきている。闘病体験配信は多様化しつつあるのだ。TOBYOはこれらについても、いずれ整理分類し可視化し、すべて検索できるようにしていきたい。

まず、Googleブックスがリアル闘病本のネット配信をはじめていることに注目したい。たとえば「闘病記」で検索すると、まだ検索ヒット件数は108点にすぎないが、いくつか興味深いリアル闘病本をオンラインで読むことができる。これらのリアル闘病本は、今のところ文芸社など自費出版を専門に扱う出版社から自費出版されたものがほとんどだが、今後、一般の出版社のリアル闘病本もネット上に公開されてくると思われる。また、本文のうち部分的に割愛されて公開されているものも多いのだが、本文をキイワード検索できるなど、リアル闘病本にはないデジタル化の恩恵を活かしたメリットもあるわけだ。 続きを読む

日本の総患者数2,674万人と闘病サイト

luxuriance

闘病サイトを開設し、闘病ドキュメントを公開している人は、すべての闘病者のうち、どの程度の割合になるのだろうか。ふとそんなことを最近考えることがある。これまで闘病ユニバースを構成するサイト数を、およそ三万件と想定してきたが、ではこの三万件という数字は、いったいどう見るべきものだろうか。「三万件も」とそのサイズの大きさを言うべきなのか、あるいは「三万件しか」とその小ささを指摘すべきなのか。

こんなことを考えてみたのは、当方は「闘病ユニバース」という括りで闘病サイト群を見てきたのだが、ではこの「闘病ユニバース」というものは、日本の闘病者全体の中でいかほどの位置を占めているのか、ここがどうしても気になるのだ。そこでまず「日本の全闘病者」だが、これは厚労省が定期的に発表している「患者調査」から概要を把握することができる。最新版は「2005年患者調査」である。この調査報告書の「第12表:主要な傷病の総患者数」を見ると、主要傷病の総患者数は約2,674万人と推定されている。ちなみに、ここにおける「患者」とは「医療機関で受療している人」のことを指している。そして疾患別の患者数ベストテンは次のようになっている。 続きを読む

製薬会社がTwitterを広報に活用:ベーリンガーインゲルハイム

今年になってTwitterが医療機関で広く利用されるようになったが、製薬会社では広報など企業コミュニケーション活動ツールとしてTwitterを活用するケースが増えてきているようだ。中でも、一番熱心にTwitterに取り組んでいるのがベーリンガーインゲルハイム社。同社広報担当John Pugh氏が、非常にわかりやすいプレゼンスライドを公開したのでご紹介しておきたい。

日本ではまだ企業広報にTwitterを活用する例は少ないようだが、今後、まちがいなく増えていくだろう。製薬企業にとっては、特にスピードが要求される情報配信、たとえば薬品情報アップデートなどに威力を発揮するものと思われる。

三宅 啓 INITIATIVE INC.

新しいパブリックセクター

AtlanticR&B

先週から体調をこわしたこともあり、この「秋の連休」は全面的に休養しブログも休んだ。ひたすら自宅で音楽を聴いて過ごしたが、連日の仕事から離れ、ほど良い空白期間を得ることができた。まったく違う角度から再度自分の立ち位置を見つめることも、ときには必要だ。

連休を通して、もっぱら60年代AtlanticのStax/Volt系ソウルミュージックをアナログ音源で聞いたが、やはりこのあたりの音は古いMMカートリッジの方が良く鳴る。ロック、ソウル、ジャズなどのジャンルで、結局、一体何を聞いているのかと言えば、やはりドラムスの音を聞いているのだと最近思うことが多い。ドラムスの鳴り方が、これらの音楽を基本的に決定しているといってもよいだろう。そして、音を繊細に上品に聴かせる新しいカートリッジはドラムス再生には不向きであり、むしろ荒削りで大ざっぱな、古くて安物のカートリッジのほうが、より好ましいドラムスの音を再現してくれる。 続きを読む