2009/08

D2C遺伝子解析サービスの使い方

2009/08/03 月曜日 - 09:01:14 by 三宅 啓

一昨年から欧米でブレークし始めたD2C(Direct_to_Consumers)遺伝子解析サービスだが、23andMeを実際に利用したユーザーの体験ビデオが公開された。非常にわかりやすい。しかし、このユーザーは結果的に自分のデータまで公開してしまっているが大丈夫か?。最近、ハーバードメディカルスクールのCIOを務めるジョン・ハラムカ氏が、数年間にわたる自己の医療情報をすべてウェブに公開して話題になったが、むしろ自分の医療情報を積極的に公開する動きさえ一部に出てきている。「医療情報をシェアする権利」を最初に主張したのはPatientsLikeMeだが、従来のプライバシー観から逸脱するようなこれらの動きをどう評価すべきか?。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

病院サイトの世界ランキング

2009/08/04 火曜日 - 09:24:42 by 三宅 啓

hospital_ranking

スペインの公的研究機関CSICに属するCybermetrics Labが、世界の病院サイト・ランキングを発表している。 そのTOP1,000を見ると、100位までにランクインしている日本の医療機関は、東京大学医科学研究所(16位)、国立がんセンター(58位)、奈良県立医科大学(91位)となっている。ランキングの方法は「純粋に学術的な観点から」としてあるが、世界ランキングや各地域ランキングをざっとながめると、研究機関や大学病院のウェブサイト中心に選出されており、今一、納得感の低いランキングになってしまっているのが残念だ。

たしかに病院自体のランキングということなら、米国を中心にかなり多くのサービスが提供されているが、病院サイトランキングというのはこれまであまり例がない。また、病院サイトの認定ならHONコードはじめいくつかのサービスがあるが、これらはサイトの相対評価という観点を欠いている。 »もっと読む・・・ »

医療情報配信のニューウェーブ

2009/08/05 水曜日 - 09:33:36 by 三宅 啓

MayoClinic_0908

去る6月末から、米国のトップブランド医療機関であるMayoClinic は、セリアック病 の患者に対してTwitterで最新の研究成果など情報配信を開始した。MayoClinicはこれまでもブログ、Facebook、YouTube専門チャネル などを使ってセリアック病に関するビデオやオーディオクリップを配信してきたが、セリアック病患者に対し、Twitterで一層きめ細かい情報提供活動をしていく予定。

MayoClinicでは、Twitter配信した情報に対するユーザー行動を見極め、その情報を再配信した患者ユーザーなど数名を選び出した上で、さらに詳しいセリアック病研究に関する専門情報(従来は専門家だけに配信していた情報)を配信するようだ。この専門情報については、一般公開と同時に、これら選出された患者ユーザーがブログなどで発表することを許可する。

まだ不明な点も残すが、今回のMayoClinicの新しいチャレンジは、従来の医療情報配信方法を根底的に変える可能性を孕んでいると思う。まず第一に、今回のMayoClinicのセリアック病情報配信が、ターゲティングを意識したものであることに注目したい。従来の医療情報配信は、不特定多数に対し一般的な医療情報を提供するものであり、特定の層に対する専門的な情報配信ではなかった。つまり従来の方法は多分にマスメディア的であり、ネットの特性を活かした情報配信ではないのである。それに対し、今回のMayoClinicのTwitterでの情報配信は、「セリアック病の患者」というターゲットを明確にした情報配信である。 »もっと読む・・・ »

患者体験調査による病院レーティング: ConsumerReportsHealth.org

2009/08/06 木曜日 - 10:11:25 by 三宅 啓

ConsumerReportsHealth

今週月曜日(8月3日)から、消費者商品評価団体ConsumerReportsは全米病院のレーティングサービス を開始した。この病院レーティングは、米国政府が実施している「患者体験に基づく病院評価調査プロジェクト=HCAHPS(the Hospital Consumer Assessment of Healthcare Providers and Systems)」のデータを利用し、消費者にわかりやすい形で提供しようというものだ。全米約3700病院で、約100万人の患者が入院中に実際に体験した結果を、以下に見るHCAHPSの「8つの評価指標」について集計分析している。

  • 医師や看護師とのコミュニケーション
  • ペインコントロール
  • どの程度の頻度で、必要な時の呼び出しに対応されたか
  • 病室の清潔さと静かさ
  • 新薬についての情報
  • 退院時の説明
  • その病院を家族や友人に推薦するかどうか
  • 総合的な入院体験評価

HCAHPSとは懐かしい!。数年前、当方は医療評価事業を構想しており、当時このHCAHPSや英国CHI、またこれらのルーツであったピッカーメソッドを徹底的に研究していたことがあった。HCAHPSは、当時のブッシュ政権の医療政策における目玉の一つであり、「一つの統一尺度で全米病院を患者視点で評価し、消費者の病院選択に役立てる」ことを目指す先進的なプロジェクトであった。だが「先進的」であるが故に、医療界、レガシー調査ベンダー業界などの抵抗は根強く、調査票開発などは何度も挫折を経験したのである。 »もっと読む・・・ »

患者体験は医療を変える

2009/08/07 金曜日 - 09:43:26 by 三宅 啓

昨日エントリで、HCAHPSやCHIなど患者体験調査について振り返ってみた。考えてみると、ピッカーメソッドを研究し日本版患者体験調査を構想してから現在のTOBYOプロジェクトに至るまで、ずっと私たちは「患者体験」ということにこだわってきたのだとあらためて認識した次第だ。

患者体験調査においては「体験された事実の頻度」を計測し、体験を数量化した上で分析することをめざしていたわけだ。それに対し今のTOBYOプロジェクトで私たちがやっていることは、体験ドキュメントを収集し、共有し、DB化した上で全文検索可能にすることである。このようにアプローチ手法はかなり違うが、「患者体験」に焦点を絞っている点では同じと言える。 »もっと読む・・・ »

医療IT化をめぐる新旧両陣営の戦い

2009/08/08 土曜日 - 11:23:33 by 三宅 啓

EricSchmidt 8月6日木曜日、Googleのエリック・シュミットCEOが、オバマ政権の医療IT促進プランを「イノベーションを阻害し、古い時代遅れの医療ITシステムを温存する可能性がある」と批判した。これは、この春先から起きたEHR認証問題論争とも関連しているが、一方では総額200億ドルとされる米国政府の医療IT促進補助金をめぐる争奪戦という側面もあるだろう。

6日開催された”The President’s Council of Advisors on Science and Technology”の席上、エリック・シュミット氏は「現在政府が計画している全国医療ITシステムは、病院や医師が時代遅れのデータベースシステムを使う事態を招来するだろう。それらシステムにおいては、ますますWebにフォーカスした世界が増大しているにもかかわらずである。政府のこのアプローチ手法はイノベーションを阻害するものであり、医療プロフェッショナルが、現存する時代遅れの医療データベースを使い続けることを請け合うものだ。これらデータベースの多くは、著作権で保護され複製をつくることもできない」と主張した。またGoogleやMicrosoftが開発したWebベースのPHRを例にとり、「国の医療ITシステムはWebベースで、患者が直接コントロールできるものであるべきだ」と述べた。同席していたエール大学総長リチャード・レヴィン氏も、「現状のEHRは、プロプライエタリで相互運用性を欠いたものであり、見るに耐えない」とエリック・シュミット氏の主張を支持した。 »もっと読む・・・ »

書評:「ウェブはバカと暇人のもの」(中川淳一郎著、光文社新書)

2009/08/09 日曜日 - 12:05:45 by 三宅 啓

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春から「話題の書」であることは知っていたが、ようやく遅まきながら通読した。本書を読みながら、かつて自分が経験したことがフラッシュバックを伴って思い出された。あれはたしかドットコムバブル崩壊直後の2001-2002年頃だったと思うが、当時、私は広告会社を辞し、ウェブ制作会社で大手通信キャリア企業が運営していた誰もが知っている某ISPポータルのコンテンツ企画・運営に携わっていた。本書にあるエピソードや著者の主張は、当時の私が経験したことや考えていたこととほとんど同一のものだ。だから正直言って、ある意味で「自嘲的な懐かしさ」といった感覚に領されたのは間違いない。

本書でも繰り返し述べられている「B級で、おバカな、エンタメ企画」が、当時、まさにコンテンツ企画の王道であり、またクライアント筋から要求されていたことだ。だがこれら「B級で、おバカな」コンテンツ企画とサイト運営に携わる現場は、やり場のない閉塞感に強くとらわれていたのである。第一、作っていても「面白くない」のである。そして、たまたまある若手タレントを起用した「B級、おバカ」コンテンツが、タレント自身の粗相によって炎上した「事件」を経て、とうとう「こんな世界とは絶縁したい」と決め、その現場から去ったのである。 »もっと読む・・・ »

PHR市場でMicrosoftに後れを取るGoogle

2009/08/10 月曜日 - 10:18:06 by 三宅 啓

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“CLEAR! Shocking Google Health Back to Life”,Scott Shreeve,MD)

米国PHR市場における主要プレイヤーは、一昨年の秋に登場したマイクロソフト社のHealth Vault、昨年春から起動したGoogle Health、そしてインテルやウォルマートなどのDOSSIAの三者だが、実質的にはHealth VaultとGoogle Healthの戦いになると見られていた。ところが最近、Health Vaultの競争優位が次第に明らかになってきている。同時に、特にGoogle Health開発のスローペースぶりに対して、Health2.0コミュニティから苛立ちにも似た批判が巻き起こってきている。批判は「Googleは本気で医療ITに取り組む決意を持っているのか?」から「Googleは出直せ!」に至るまで、主としてGoogle経営陣に向けられてきている。

Health2.0コミュニティきっての論客スコット・シュリーブ氏は、上記のような両者の比較対照表をブログで公開している。これを見ても、プロジェクトに従事する従業員数で実に100倍、提携組織数で10倍など、両者の間に徐々に圧倒的な差がつきつつあることがわかる。

このままHealth Vaultの独走を許せば、米国PHR市場は健全なコンペティター不在のままマイクロソフト社に独占される可能性があり、そのことは結果としてPHRの進化を遅らせ、市場の成長さえ阻害しかねない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

CISCOの遠隔医療システム

2009/08/11 火曜日 - 09:33:38 by 三宅 啓


先日、Salesforce.comがEHR市場参入を発表し話題になったが、相変わらずIT企業の医療市場参入意欲は高い。CISCOも以前から医療への取り組みをしてきたが、どうやら遠隔医療(Telemedicine)分野へ焦点を合わせているようだ。一口に遠隔医療といっても実は多様な展開が考えられる。それを大ざっぱに整理してみると、次の三領域になるだろう。

  1. 在宅遠隔医療サービス
  2. 拠点型遠隔医療サービス
  3. 海外遠隔医療サービス

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「ペイヤーサイドのEHR」の考察

2009/08/12 水曜日 - 10:19:20 by 三宅 啓

Lotus2009

今月、米国ミシシッピー州は、ウェブベースのEHR(Electric Health Records)を無料で医師に提供すると発表した。このEHRの目的は、ミシシッピー州在住60万人のメディケイド(低所得者向け公的医療保険)加入者へのサービス向上にあり、加入者の検査データ、投薬、予防接種、アレルギー等についてのデータを集約している。さらに電子処方箋、退院情報へのアクセス、ケアの空隙を特定するための支援ツールなどアプリケーションも提供する。このEHRは基本的にはメディケイドが持っている医療データを集約し、医療現場に無料で提供するものであるが、メディケイド以外の関係機関が保有するデータも集める必要があり、そのためにHIE(health information exchange)ソフトウェアをShared Health社から調達している。

このケースを読んでいろいろ考えさせられたのだが、一言で言うと、これは「ペイヤー(保険者)サイドのEHR」である。従来、EHRと言えば「医療機関のEMRを広域で集約したもの」というふうに、あくまでも医療機関を起点として考えられてきた。だが、個人の医療情報は保険者側の手元にも大量に集まっており、これをDB化すればたちどころに医療機関を横断するEHRになるわけである。そしてこれをウェブベースで運用すれば、医療機関の枠にとらわれずに、患者個人の医療情報をいつでも一か所に集約できるわけだ。なおかつ、医療機関側ではシステム設置コストも運用コストもかからない。ただ医療機関側のEMRとのスムースな情報交換だけが問題になるが、これもHIEを使用すれば解決するわけだ。つまりこのミシシッピー州のケースは、EHRなど医療情報システムのありかたについて、医療機関以外の多様なプレイヤーの多様なイニシアティブによっても、多様に成立することを示している。

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