闘病ユニバースへのリスペクト

TOBYO_Universe

私たちが、外部の人から日頃よく訊かれる質問がある。それは「TOBYOのようなサービスは海外にあるのか?」という質問である。それに対し「海外にはTOBYOのようなサービスは存在しない」と答えると、たいていは意外な顔をされる。まあ、このブログで海外の新しい医療サービスを多数紹介しているので、きっとTOBYOも、それらのうちの或るサービスから発案されたのだろうと見られても、ある意味当然だとは言えるだろう。だが、TOBYOは生粋の「Made in Japan」なのだ。

TOBYOは私たちのオリジナルアイデアだが、そのことをあまり自慢するつもりはない。なぜなら、正確に言えばTOBYOは日本の闘病ユニバースが生み出したものだからだ。15年前に日本で商用インターネットが始まって以来、日本では「ネットで闘病体験を公開する」という文化が自然発生的に生まれたのである。現在、ネット上にはおよそ3万件(推定)の日本語闘病サイトが開設されているが、この15年間に、この闘病ユニバースは量的にも質的にも進化してきたのである。 続きを読む

医療情報検索対象の拡大について

蒸し暑い。こんな季節は早朝出勤に限る。朝っぱらから、ギューギューの満員電車で汗まみれで通勤するなんてごめんだ。というわけで、今朝は五時に家を出て六時前に事務所へ到着。新宿御苑周辺は爽やかな風が吹いていた。

今週から七月。今年も半分終わり。今年後半の計画はもう決めてあるが、これもどんどん柔軟に見直していかねばならない。TOBYOだってどんどん柔軟に変化していく。ユーザーベネフィットをどんどん詰めていくと、現状のままでいいはずがない。コアを残しつつも、新機軸を投入していく。

まず、TOBYOは闘病体験に焦点を絞った情報提供をしているが、あと医療機関や研究機関の医学情報まで提供することになれば、TOBYOのワンストップ性は高まるだろう。ユーザーは、あちこち他のサイトを見て回る必要が減るからだ。だが、TOBYOはその名のとおり「闘病体験」というものに強くこだわってきた。今後も基本は変えるべきではない。しかし、基本は残しながら少し守備範囲を広げても悪くはないだろう。 続きを読む

今週、「歴史」が動いた

今週は、とにかく「医療情報の権利宣言」につきる。欧米のブロゴスフィアを見ていると、その後もこの「権利宣言」に言及するエントリが続々とポストされている。近年にないものすごい盛り上がり方であるが、近代医療史上、特筆すべき大事件であると言って過言でないし、また、おそらく今後のHIT(医療情報技術)の方向性を決定づけることになるだろう。

何十年かたった将来、私たちは「あの権利宣言で、医療の全てが変わったのだ」と言うことになるだろう。私たちの子供たちや孫たちが、きっと学校で「権利宣言」の歴史的意義を学ぶことになるはずだ。この「権利宣言」は米国のHealth2.0コミュニティだけのものではなく、全世界の闘病者・消費者のものである。もちろん、日本で新しい医療サービスを開発しようとしている私たちにとっての共有財産でもある。 続きを読む

Health2.0と日本

昨日の続きだが、日本のHealth2.0というものはまだない。私たちのTOBYOをはじめ、いくつかの新しい試行が始まっているとはいえ、それはまだ米国のHealth2.0ムーブメントのようなパワーを持つには至っていない。ついでに言えば、このHealth2.0という言葉自体が、まだまだ一般的に日本で語られることは少ないのである。おそらくこの当方ブログが、Health2.0関係のニュースを日本で一番多く発信しているはずだ。欧米ではレガシーメディアまでがHealth2.0をしばしば取り上げているが、日本では今のところ皆無である。

どうしてこのような「情報格差」が日本と世界の間で生じてしまったのだろうか。これにはさまざまな説明が可能だろうが、前から気になっているのは「2.0の受容性」という問題である。多かれ少なかれ、Health2.0がweb2.0のインパクトを受けて登場してきたのは間違いないと言えるだろうが、そのweb2.0の受容の仕方が日本と欧米では何か違っていたのではないかと思う。日本の場合、web2.0は非常に皮相なレベルの理解として受容され、流行現象として消費され、早々に終わってしまったのではないだろうか。しかも社会全体ではなく、非常に限定的な層にしかweb2.0の持つ意味は受容されなかったと思う。特にアカデミズムをはじめエスタブリッシュメント層には、ほとんどさしたる影響を与えることもなく無視された可能性が高い。「況や医療においてをや」である。 続きを読む

「宣言」とHealth2.0

昨日エントリでご紹介した「医療情報の権利」宣言は、今後、私たちがインターネットと医療を考える際の重要な基本指針となるだろう。またHealth2.0ムーブメントが、このような宣言を生み出すところまで来たことを素直に喜びたい。一昨年から始まった、インターネットと医療をめぐる世界的な新たな動き。PHR、問題解決型患者コミュニティ、消費者参加型医療、医療情報の流動性の確保、シェアする権利、・・・・などなど。これまでは、ばらばらに存在しているように見えたこれらすべてを「宣言」が繋ぎ合わせ、めざすべき「近未来医療」の方向性を提示してくれたような気がする。

アダム・ボスワース氏のエントリ「Declaration of Health Data Rights」は是非お読みいただきたい。非常にわかりやすく「宣言」の背景と必要性がまとめられている。これを読みながら、「このような発想は、絶対に医療界内部から出てこないだろうな」という感想を持った。だがこの考察は、よく考えてみると何も目新しいものではない。フツウの患者や消費者なら、誰でも日常的に思っていることや感じていることを、ただまとめて述べたに過ぎない。 続きを読む