「闘病記」を越えて(2): 「分解-再編-総合」

「リアル闘病本」としてパッケージ化された「闘病記」と、現在ウェブ上に多数活動中の闘病サイトは、一見似ているようでまるで別モノである。その「違い」にこだわろうとするのか、それともその「違い」を無視しようとするのか。当然、どちらを取るかによって、闘病体験に関わるサービスの方向性はまるで違ったものになる。それを極論すれば、その違いを無視し、あえて従来の「闘病記」の延長線上で発想しようとするなら、何もウェブを使ってサービスを開発する必要はないはずだ。従来の出版サービスや図書館のようなもので十分だ。

つまり、リアルのアナロジーとして闘病サイトを見ている限り、基本的にどのような新しいユーザー価値も作ることはできない。同様にこのことは、患者体験のビデオパッケージにも言える。従来のビデオパッケージを単にウェブサイトで配信するだけなら、それは古くて懐かしい「オンデマンドVRS」と変わるところはない。だがこれは、今日のYouTubeなどとはまったく別モノと考えなければならないだろう。コミュニティについても同様である。従来のリアル「患者会」のようなものをウェブ上にあえて作る必要はないし、むしろ「患者会」の延長線上にウェブコミュニティを考えてはならないのだ。要するに「リアルをウェブ上に再現する」という誘惑を断固として退けなければ、どのような新しい医療サービスも作ることはできないのだ。 続きを読む