2009/03

ビジョンなき「IT戦略」

2009/03/02 月曜日 - 21:24:13 by 三宅 啓

政府は経済危機に対応した「IT新戦略」を準備しているようだ。その四つの重点分野のうち「医療現場のIT環境強化」というのがあるが、これは明らかにオバマ政権の医療IT強化政策を模倣したものだろう。その中身は次のように報じられている。

医療分野の目玉は、電子化した個人の健康情報を各地の医療機関で共有する『日本健康情報スーパーハイウェイ構想』(仮称)。医療機関同士をつなぐ光ファイバー網を新たに整備。画像診断情報などを瞬時にやりとりできるようにすることで、地域医療や救急医療の改善にもつなげる。(日経3月2日朝刊)

この『日本健康情報スーパーハイウェイ構想』とやらは、そのネーミングのひどさは置いておくとして、どうやらPHRをコアとする新しい医療情報ネットワークを指すらしい。たしかにPHRは、これからの医療情報システムのコアを担うことは間違いない。従来、電子カルテやEHRなど医療機関にフォーカスした情報システムばかりが注目されてきたのだが、医療機関から消費者個人へと優先順位を転倒したPHRの発想は、単に情報システムだけではなく、今後、医療全体が進むべき方向性を指し示していると考えられる。今後の医療は、ますますパーソナル化を強める方向に進化するであろう。 »もっと読む・・・ »

Health2.0論の新展開

2009/03/04 水曜日 - 20:13:17 by 三宅 啓

Health2.0コンファレンス主催者であるマシュー・ホルト氏が、新しいHealth2.0論スライドを公開した。これは、HHS(米国社会保険福祉省)のNCVHS(National Committee on Vital and Health Statistics)およびAHRQ(Agency for Health Research and Quality)の会合でプレゼンテーションされたものである。

プレゼンテーションの相手が医療統計などに関わるセクションであるためか、医療統計のデータソースというアングルからHealth2.0を捉えているところに、いささか違和感を覚える。やはり従来と同じく、冒頭部分はWeb2.0から説き起こされているのだが、これも現在ではいささか古色蒼然という感もある。しかし一方では、これまでのHealth2.0論にはなかった新しいアイデアもいくつか散見される。 »もっと読む・・・ »

医療wikiの現在

2009/03/05 木曜日 - 19:09:06 by 三宅 啓

medpedia0903

以前から「医療wikiの決定版」と言われていたMedpedia。ついに先月ベータリリースされた。すでにTechCrunch「Medpediaは医師、患者ともに利用できる健康情報版のWikipedia」で取り上げられているので、詳しい情報はそっちをご参照あれ。当方も以前からこのサイトに注目してきたが、結局、医療者と一般ユーザー双方をターゲットにしている点、そしてSNS機能を付加している点がこれまでの医療wikiサイトとの際立った違いである。世界トップレベルの医療関係者が結集し「健康・医療分野の情報プラットフォームの決定版になる可能性が十分にあるだろう」とTechCrunchでも評されているが、残念ながら英語版のみである。日本でもこのような「健康医療情報の決定版プラットフォーム」を作ることはできないものか。「Medpedia Japan」。実現できれば素晴らしい。 »もっと読む・・・ »

Google Healthの新機能

2009/03/06 金曜日 - 19:29:49 by 三宅 啓

Ghealth

3月4日、GoogleはオフィシャルブログでGoogle Healthの新機能を発表した。今回追加された新機能は情報共有機能とグラフ機能である。

まず情報共有機能だが、Google Healthに蓄積されたユーザーの個人医療情報を家族、友人、医師などと共有することができる。これによってユーザーの病歴、薬歴やアレルギーの有無など個人医療情報が近しい人々と共有され、突発時に適切な救急医療を受けることができる。情報共有するためには、Google Healthにログインの上、「このプロフィールを共有する」ボタンをクリックして共有したい人のメールアドレスを入力する。すると招待メールが共有相手に送られ、相手はメールに記載されたリンクを利用してユーザーの個人医療情報を見ることができる。このリンクは記載メールからのみ利用でき、転送メールなどからは利用できない。また、ユーザーは自分の個人医療情報へのアクセス状況記録を確認することができ、いつでも共有を停止することもできる。 »もっと読む・・・ »

Google Healthの付加サービス登場

2009/03/09 月曜日 - 19:25:49 by 三宅 啓

epocrates

先週、情報共有サービスを発表したGoogle Healthだが、サードパーティが提供する付加サービスも登場してきた。

医師向け薬剤情報サービスのEpocratesだが、Google Healthユーザーがかかりつけ医師に、自分の医療情報を見る許可を与えるサービスを開始している。Epocratesを利用している医師の会員IDを教えてもらい、Google Healthユーザーが「かかりつけ医師」として登録する仕組みになっている。だが、これでは先週発表された情報共有サービスとダブりそうだが・・・・・。さてどうするのだろうか? »もっと読む・・・ »

クラウドソーシングで医療改革

2009/03/11 水曜日 - 18:26:20 by 三宅 啓

HealthReform

昨年12月、オバマ次期大統領(当時)の政権移行作業チームは、全米市民に米国医療制度改革について、それぞれの地域で「医療地域ディスカッション」を開催し討議に参加するよう呼びかけた。ホリデーシーズンにもかかわらず、この呼びかけに応え、9千人を上回る市民が「ディスカッション」に参加登録し、医療制度改革の討議という共通目的のもとに、家庭、事務所、コーヒーショップ、消防署、大学、地域センターなどに集まった。

全米各地のディスカッション風景

グループ討議のもようはそれぞれの会場ごとにグループレポートにまとめられ、また参加者にはアンケート調査が実施され、それらすべては大統領政権移行チームのウェブサイト「www.change.gov」に集約された。集まった医療改革討議グループレポートは3,276件、アンケート調査票は30,603票に達した。 »もっと読む・・・ »

ある違和感

2009/03/12 木曜日 - 19:12:01 by 三宅 啓

3月9日の日経朝刊社説「レセプト完全電子化を後退させるな」に対し、賛否両論がネット上のあちこちに散見される。とりわけ「医師ブログ」などからは強い拒否反応が上がっているが、相変わらず匿名で、なぜ逆上までしなければならないか理解に苦しむ。むしろ日経社説は、医療IT化をめぐる常識的な見解を述べているに過ぎないと思える。

このブログでも、過去のいくつかのエントリでレセプトオンライン化など日本の医療IT化の遅滞ぶりを取り上げてきたが、実は米国などでもIT化は遅々として進んでおらず、内外を問わず、なぜこんなに医療者とITは相性が悪いのか。
かつて数年前、厚労省と経産省が共同主催するある公開シンポジウムが開かれた。そのシンポジウムのタイトルは、たしか「医療にITは必要か?」というものであった。とにかくこのタイトル自体に驚いてしまった。いざシンポジウムが始まってみると、その疑念はますます深まるばかりであった。出席パネリストは医師、学者を中心にIT企業、NPO、作家などであったが、なんとこれらの出席者を医療IT化に対する「賛成派」と「反対派」に分け、それぞれの言い分を展開させようというのだから、唖然とするほかなかった。 »もっと読む・・・ »

TOBYOのプロジェクトミッション

2009/03/13 金曜日 - 22:21:11 by 三宅 啓

現在、TOBYOプロジェクトは検索エンジン「TOBYO事典」の改善に取り組んでいる。思えば昨年9月以来、この仕事を延々続けてきたわけだが、1月10日公開したものをさらにパワーアップすべく調整中である。あと少しでパワーアップ版を公開できるだろう。さて昨春から、TOBYOプロジェクトのミッションについてこのブログで様々に考察してきた。すでにお気づきのとおり、プロジェクトミッションは徐々に変わってきている。

その中でも一番大きな変化は、昨夏あたりに計画していた「量から質へ切り替えていく」との路線を変えたことだと思う。これは、闘病記を1万件集めた時点で実行するはずだったが、結局、さらに拡大させていくことの方を選択した。TOBYOが闘病ユニバースというオープンな巨大コミュニティを想定し、そのインフラツールを目指すとすれば、可視化の対象は1万件で終わらせるのではなく、むしろ闘病ユニバース全体でなければならない。そう考えたからだ。 »もっと読む・・・ »

Walmartが医療IT市場へ進出

2009/03/16 月曜日 - 21:25:26 by 三宅 啓

Walmart

3月10日付けNewYorkTimes は、Walmartがこの春からEHR市場に本格参入し、価格破壊を医療IT市場に持ち込むと伝えている。これは、オバマ政権が医療IT化刺激策として総額19億ドルのインセンティブを投じることに照準を合わせたものだ。米国医療のIT化は、特に小規模診療所では遅々として進んでいない。その理由として、高い導入コストと操作の複雑化を医師が嫌ってのことだと言われてきた。昨年実施された調査によれば、米国でEMR/EHRなどを医療現場で使用している医師はわずかに17%である。

WalmartはDellとEMR/EHRベンダであるeClinicalWorksと組み、低コストで高機能なシステムの供給をめざしている。価格だが、従来ベンダが提示していた価格のおよそ半額以下になるという。「われわれは”high-volume, low-cost”の企業である。その精神が、医療業界では悲しいまでに欠落している」と、Walmart医療事業開発部門のシニアディレクターであるマーカス・オズボーン氏は述べている。Walmartはこれまでリテールクリニックやコンビニ薬局など医療分野に着々と参入してきたが、とうとう医療機関や医療者を直接顧客とする市場へ進出することになる。 »もっと読む・・・ »

プロフェッショナル向け医療検索エンジン: Mednar

2009/03/18 水曜日 - 20:38:07 by 三宅 啓

mednar

「Deep Web Medical Search」と銘打った医療専門検索エンジンMednarの評判が高い。これはGoogleなどと違い、クローリングやインデクシングを用いないメタ検索エンジンで、リアルタイムで複数のウェブ上のDBソースに対し検索を実行し、その結果を統合して表示する。Mednarではこれをメタ検索検索エンジンとは呼ばず、「Federated Search Engine」と呼んでいる。ソースは医療分野ですでに定評のあるDBを選んでいるため、検索結果にスパムや信憑性の低い情報が混じることはない。 »もっと読む・・・ »