消費者ニーズと医療のマッチングサービス:HealthShoppr.com

healthshoppr.jpg

患者・消費者の医療ニーズを考えてみると、それらは決して一様ではなく、一人ひとり個別で、しかも特殊なニーズであるはずだ。患者の性・年齢などデモグラフィック属性のみならず、患者のライフスタイルや健康意識などによっても、求められる医療は千差万別であるからだ。ところが医療提供側は、そのような多様な消費者側のニーズを無視してしまいがちである。つまり、建前として「患者の選択」を重視するようになってきたとはいえ、現実には消費者が求める医療と、医療界が提供する医療との間にはギャップが存在し、ミスマッチが起こっている。

別の言い方をすれば、消費者の医療ニーズはもともとロングテール状に存在するにもかかわらず、医療機関側はヘッド部分にのみ対応しようとしている。だが、もしも一人ひとりの医療者を可視化できるとすれば、医療提供側にもロングテールが形成されることになり、両者のテール部分をマッチングさせるサービスが登場する余地が出てくる。それはある特殊な消費者の医療ニーズに対し、それを充たす特別な技能や経歴を有する医師を紹介するようなサービスである。 続きを読む

統合失調症ネットラジオ「こころらじお」

kokoro_radio

こころらじお」は、統合失調症の闘病者が自主運営するネットラジオ。ラジオ番組配信の狙いは、次のように述べられている。

この番組は、統合失調をテーマにして、統合失調症の方、 その家族の方、また、この病気について知りたい方に、聴いていて、楽しく、役立つ、 元気になる放送を目指しています。

すでに、2006年の放送開始から9本のプログラムをネット放送しているようだ。プログラムのテーマを見ると、下記のように、どれも統合失調症闘病者の生活に根ざした親しみやすいものばかりで、まさに「元気の出る」内容となっている。

続きを読む

破壊的イノベーションと医療

Christensen

「破壊的イノベーション」(Disruptive Innovation)とは、ハーバードビジネススクールのクレイトン・クリステンセン教授が「イノベーションのジレンマ―技術革新が巨大企業を滅ぼすとき」(Harvard business school press)で展開した経営コンセプトであるが、先月、今度はこのコンセプトを医療に適用した新著「THE INNOVATOR’S PRESCRIPTION: A Disruptive Solution for Health Care」が発表された。

クリステンセンのこの新著は、早速、New York Timesが「Disruptive Innovation, Applied to Health Care」(1月31日)で取り上げている。またHealth2.0コミュニティでも注目を集めており、中心的論客スコット・シュリーブ氏は、自身のブログでクリステンセンの共著者Jason Hwang氏にインタビューを試みている。 続きを読む

評価と選択

昨日のNHKスペシャル「うつ病治療 常識が変わる」をたまたま見た。TOBYO収録のうつ病闘病サイトもすでに1100件を越えており、疾患別に闘病サイトを見れば群を抜いてナンバーワンである。最近の傾向を見ると、ブログが認知行動療法に利用されるケースもあり、うつ病などメンタル系の闘病者による闘病サイトは急増している。

番組ではうつ病の医療提供実態について問題をいくつか取り上げていたが、その中で、特に医師の技量のばらつきの問題は深刻である。ある地域では、地域に存在する心療クリニックをクチコミで評価し、消費者がクリニック評価マップまで作っている例を紹介していたが、医療機関や医療者の技量を評価するデータが開示されていない以上、当然の防衛的な消費者行動と言えよう。むしろこのような評価マップは、ウェブ上で共有されるのが望ましいのではないかと思った。 続きを読む

「闘病ユニバース」についての覚書

TOBYO_Universe

TOBYOの位置づけというものを考えてみると、当初、原型となるアイデアが出来上がった時にはまだ不分明であり、やがてそれは「闘病ネットワーク圏」というビジョンが浮かび上がって、ようやく明確になったのである。以来、「闘病ネットワーク圏のインフラツール」というシンプルな説明が可能になったのだが、何度も繰り返すうちに「闘病ネットワーク圏」という表現自体に、今度は違和感を抱くようになってきたのである。

第一、ネット上の現象を指すのに「ネットワーク圏」などと言うのは、単なる言葉の繰り返しのようで表現がくどい。もっとすっきりとは言えないものか。できれば、佐々木俊尚氏の「インフォコモンズ」のようにかっこよく。そんなことを考えているうちに「闘病ユニバース」という言葉が口を衝いて出た。 続きを読む