2009年の吉本隆明

昨夜のNHK教育「吉本隆明 語る ~沈黙から芸術まで~」。夕飯時、妻から番組の存在を聞かされた時、一瞬、見ようか見まいか躊躇した。しかし放送時間になると、やはり見てしまわずにはおれなかった。なんとなく、これが大勢の聴衆を前にした吉本の最後の講演になるような気がしたからだ。

番組を見てみると、やはり「ある覚悟」を抱いて聴衆の前に立つ吉本氏の姿を確認することになった。老醜を隠しもせず、まわらぬ不自由な口を懸命に開いて押し出す声は、時には明確な言葉を結ぶことなく空中に消失し、時には不意に降ってきた想念に中断され、本人の意図に反してあちこちに砕け飛沫と散る結果となった。だが、それでもなお一脈の想念というものが、強い説得力を伴って聴き手に迫ってくるのである。だから、言いたいことは「200%」わかるのである。 続きを読む