医療IT化は民間主導で

昨日のエントリでリテールクリニックと遠隔医療を取り上げたが、今日の日経朝刊に「遠隔医療 対象を拡大」との記事が一面に掲載されている。これは、総務省と厚労省が共同開催している「遠隔医療の推進方策に関する懇談会」の中間報告に基づく記事であるようだ。ざっと目を通したが、さしたる目新しい情報も見いだせなかった。ついでに総務省のサイトを見たが、この「懇談会」のメンバーを見ると、そこにかの悪名高き「住基ネット」の仕掛け人とされ、またこのような官庁主催「検討会」の「常連」である某教授の名前を見て、「やはり」と苦笑させられた。

「医療のIT化」というと、これまで官庁が医療者、学者、ITゼネコンなどを集め、検討会や懇談会で政策指針のたたきを作って来たのであるが、そろそろこのようなやりかたをやめるべき時期に来ているのではないか。最近、米国の状況を見ていると、「医療IT化は政府主導ではなく、民間主導で行くべきだ」との主張が徐々に増えてきている。ブッシュ政権のNHIN構想が目標年次を達成できないのは、すでに周知化しつつあるが、これも政府機関の非効率で実行遅延型の実施体制が問題視されつつある。 続きを読む

リテールクリニック+遠隔医療=Wal-Mart

UTMB

最近、米国で急成長しているリテールクリニック(看護師によって運営されるクリニック)だが、ショッピングセンター立地で低料金、しかも24時間365日営業が消費者に支持されている。ウォルマートは、先日、新タイプのリテールクリニック「Walk-In Telemedicine Health Care」をヒューストンから展開すると発表した。

この新タイプのリテールクリニックは、看護師の代わりに救急救命士を配置し、センターで待機する医師との間を遠隔医療機器と遠隔医療プログラムで結び、消費者に医療サービスを提供する。遠隔医療プログラムはUTMB(テキサス大学医学部ガルベストン校)が開発したもので、10年前に開発されてから世界的に評価の高いプログラム。 続きを読む

Everywhere TOBYO

連日の猛暑。この暑さのせいか、事務所のPCハードディスクもダウンしてしまった。気をつけないと人間もまいってしまう。目下、TOBYOの諸作業のためにハードワークを続けているが、そろそろ一息入れなければならないのかもしれない。

TOBYOの進行状況を報告しておきたい。現在、ベータ版を公開しているのだが、これはまだ、検索機能限定版である。TOBYOレファレンスにおいてある「TOBYO事典」は、「がん、良性腫瘍」だけを検索対象に限定してテスト運用している状態である。これを近日中に全病名検索可能にする。同時に検索窓をトップページに置くことになる。これらを実現した段階で、TOBYOは名実ともに正式デビューすることになると考えている。また、病名ごとの表示方法を変更することも考えている。

TOBYOの基本三機能「闘病記を探す、闘病情報を調べる、自分の闘病情報を整理する」のうち、現状、ユーザーに最もわかりやすいのは、言うまでもなく「闘病記を探す」機能である。実は多数の闘病記を串刺し検索できる「TOBYO事典」がTOBYOの最もユニークな機能なのだが、この検索機能を使ってユーザーに何が可能になるかを、もう少し丁寧に説明しなければならない。それと「自分の闘病情報を整理する」機能についても、現状は説明材料が不備なために理解が十分ではない。 続きを読む

日本のHealth2.0シーン

新宿御苑でやっとミンミン蝉が元気に鳴き始めた。今年は蝉の鳴き始めが遅いような気がする。ともあれ盛夏到来である。思えば二月にTOBYOアルファ版を公開してから、早くも半年が経過しようとしている。立ち止まってゆっくり考える間もなく、春先から突っ走って来たわけだが、まだ当分はこのまま進むしかない。やらなければならないことは山積しているが、とりあえず現時点で当方が考えていることをいくつかメモっておこう。

まず、「日本のHealth2.0」ということで言えば、TOBYOをはじめ春先からいくつかスタートアップ企業がサイトデビューを果たし、従来にない動きが日本の医療情報サービス分野にもたらされたと言えるだろう。だが、それらはまだ少数にとどまる。それに、まさかわれわれがこのブログなどで、UGCやUGMとしてのウェブ闘病記の意義を主張してきたせいでもあるまいが、奇しくもこれらスタートアップは多かれ少なかれ「ウェブ闘病記」に焦点を合わせている。つまりプレイヤーが少数でありながら、特定テーマへの収斂が起きているわけで、これはあまり健全な状態とは言えないだろう。 続きを読む

新知識共有ツールとTOBYO

KNOL0807

Googleは23日、昨年末からテストしていた「KNOL」を正式リリースした。このブログでも概要は紹介済みだが、手短に要約すると「このKnolは特定分野の専門知識を持つプロフェッショナルに、特定テーマの知識・情報を公開発表するためのツールを提供するものである。」となる。発表されて以来、KNOLはWikipediaと競合するツールとして論じられてきたのであるが、正式リリース版をあらためて見ると、意識的にWikipediaとは違う知識共有ツールを目指していることがわかる。

特に、KNOLでは一つのテーマについて複数の書き手の複数のエントリを認めているが、この点は、Wikipediaとまったく異なった知識共有のあり方を示していると言えよう。「A unit of knowledge」というフレーズが語るように、個人が持っている専門的知識をウェブにコントリビュートする「知識単位」という位置づけであり、今のところそれらを無理に束ねて百科事典化するようなそぶりはないのである。もちろんこれら「知識単位」をカテゴライズして配列すれば、たちどころにWikipediaのような百科事典になるのだが。 続きを読む