PHR-EHR連携イメージと診療文書標準の行方


HealthVaultやGoogleHealthなどのPHRと医療機関側のEHRがどのように連携して医療データをやりとりするか。このビデオは「MS Surface」上でのHealthVaultと病院EHRのデータ連携をわかりやすく示している。診察時に患者がPHRのIDカードを、医師がEHRのIDカードを「MS Surface」のディスプレイ上に置くと、PHRとEHRから自由に医療データを呼び出したり保存したりできるようなる。

ところでこのように両システム間でデータをやりとりするようになると、相互のデータ記述標準規格(診療文書標準)が問題となる。HealthVaultで採用しているのはCCD(Continuity of Care Document)という標準書式だが、GoogleHealthは当初CCR(Continuity of Care Record)を採用していた。CCRは、古い規格である「HL7-CDA」に対抗して作られた標準書式だが、今日、米国医療IT界では徐々にCCDが優勢になってきており、今後、診療文書標準になっていくものと見られている。そのせいか、GoogleHealthもCCD対応を表明している。

三宅 啓  INITIATIVE INC.

成長するリテールクリニック(コンビニ診療所)

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ここ数年、米国で医療の新業態として脚光を浴びてきたリテールクリニックだが、昨年の大不況の影響もあってかその成長は遅々として進んでいない。だが、今月になって大手コンサルティングのデロイト社が発表した予測レポートによれば、2011年頃からの成長期が見込まれ、2010年時点の全米1,00件程度が2014年には3,000件を越えるとのことである。

よく「コンビニ診療所」と言われるリーテールクリニックだが、医師に代わり看護師の診療でコストダウンをはかり、ショッピングセンター立地で24時間365日営業など、消費者に利便性とリーズナブルな医療を提供しようというもの。現在、市場はMinuteClinicとTakeCareの両チェーンで72%のシェアを取るなど寡占状態だが、WalMartグループなどは地元ローカル診療所との提携を進めており、さらに薬局との併設を追求するチェーンもあり、今後多様化が進展すると言われている。 続きを読む

ネット医療情報利用実態と今後の展望

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以前、ブログなどで闘病体験を公開している日本の闘病者はおよそ三万人であり、全患者に占める割合は非常に小さいと書いた。このことについて、その後あれこれ考えていたのだが、去る6月「Pew Internet & American Life Project」が発表した米国におけるインターネット医療情報利用実態調査報告書を見ると、やはり同じような傾向が米国にもあることがわかった。Health2.0ムーブメントの隆盛がある一方では、このような厳しい現実も存在することを直視したい。

まず同報告書は「米国成人のうち61%が医療情報を求めてインターネットにアクセスしており、これは2000年(25%)から著しく増大」としている。しかし「インターネットの世界に一層深く関与しつつも、引き続き米国成人は医療情報のトラディショナルソース(医師、家族、書籍等)も参照している」とも指摘している。そして注目すべきは同報告書が「インターネットによる医療情報利用者のうちの約半数は、自分のためにではなく、誰か他人の代理で情報を検索している」と指摘しているところだ。これでいくと、実際に自分のためにネット上の医療情報を利用しているのは成人の約30%になる。 続きを読む

日本の総患者数2,674万人と闘病サイト

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闘病サイトを開設し、闘病ドキュメントを公開している人は、すべての闘病者のうち、どの程度の割合になるのだろうか。ふとそんなことを最近考えることがある。これまで闘病ユニバースを構成するサイト数を、およそ三万件と想定してきたが、ではこの三万件という数字は、いったいどう見るべきものだろうか。「三万件も」とそのサイズの大きさを言うべきなのか、あるいは「三万件しか」とその小ささを指摘すべきなのか。

こんなことを考えてみたのは、当方は「闘病ユニバース」という括りで闘病サイト群を見てきたのだが、ではこの「闘病ユニバース」というものは、日本の闘病者全体の中でいかほどの位置を占めているのか、ここがどうしても気になるのだ。そこでまず「日本の全闘病者」だが、これは厚労省が定期的に発表している「患者調査」から概要を把握することができる。最新版は「2005年患者調査」である。この調査報告書の「第12表:主要な傷病の総患者数」を見ると、主要傷病の総患者数は約2,674万人と推定されている。ちなみに、ここにおける「患者」とは「医療機関で受療している人」のことを指している。そして疾患別の患者数ベストテンは次のようになっている。 続きを読む

EHR2.0とは何か

EHR2

春先からClinical Groupwareという言葉をブロゴスフィアで目にするようになった。そして、米国における医療IT関連認証機関であるCCHITの「EHR認証」をめぐる論争が起き、やがてEHR2.0という言葉が語られるようになった。

従来のEHRが「クライアント&サーバ」システムでプロプライエタリなビジネスモデルであるのに対し、EHR2.0はクラウド・コンピューティングを活用したウェブベースでオープン&相互運用可能なものと想定されている。

これらEHR2.0議論を、総括的に要領よくまとめたプレゼンテーションファイルが公開されたのでご紹介しておきたい。表題にある「HITECH Act」とは「Health Information Technology for Economic and Clinical Health Act」で、オバマ政権が打ち出した医療関連景気浮揚法案。このプレゼンテーションファイルを作成したのはVince Kuraitis氏だが、氏はかつてGoogle Healthの概要を公開に先立って予測し話題になった。ダウンロードは下記「EHR20」から。

EHR20 (PDF)

“EHR 2.0: HITECH Act Stimulus Funds Create Care Collaboration Opportunities In A Networked Health System  “

三宅 啓  INITIATIVE INC.