新たにPerspectiveが加わり、dimensions2.0へバージョンアップ

dimesions 2.0

ここ二回連続で「クチコミ病院検索」の問題を扱ったが、こっちのブログで書き出したものに補筆し、改めてYahoo!Newsのほうへニュース投稿した。結局、「ネガティブ・コメントを削除するクチコミ検索」という現象は、医療パターナリズムに端を発するものである。そこを批判しなければ、似たようなことは形を変えて何度も繰り返されるだろう。しかし、このエントリは当方の予想を超える関心を惹起したようだ。

さて、患者の闘病体験をトラッキングし自由自在に検索する「TOBYO dimensions」だが、近々にバージョンアップする予定である。今年になってから、患者闘病ドキュメントをテキストマイニング出力するPDR、PAI、PDSなどサービスを開発してきたが、あれこれとっ散らかってしまったので、一度まとめなおす必要があると思っていた。いろいろ検討した結果、やはりdimensionsに統合するのが一番すっきりするということになった。新たにPerspectiveというサービスをdimensionsに追加するが、これはPDR、PAI、PDSなどをまとめたものである。テキストマイニングによるデータ出力をメインとして、さまざまな患者視点アウトカム・レポートを提供しようと考えている。

Perspectiveとは「考え方、見方」や「遠近法」という意味を持つ言葉だが、私たちが目指しているのは、まず「医療に対する患者の考え方、見方を提供する」ことであり、同時に「患者視点で医療を遠近法で透視し、患者の目に見えたままの医療を描出する」ことである。また近年、米国FDAなどが中心となって提唱している、新しい患者中心医療評価尺度である「患者報告アウトカム」(PRO)の考え方も念頭に置いている。

特に、これまでブログでも再三取り上げてきたPDR(Patient Document Research)だが、これはPerspectiveの柱となるアウトカム・レポートであり、疾患レポートと薬剤レポートに分ける予定。これまで疾患ごとの患者ドキュメント分析を出力単位にしていたが、新たに個別薬剤ごとのデータ解析・レポート出力も加えた。検索キャッシュとしてDB化されたTOBYOのデータから、特定の薬剤名が存在するデータだけを疾患をまたいですべて抽出し、それをテキストマイニング処理しレポート化することになる。

患者報告アウトカム・レポート”Perspective”

これで複数疾患にまたがる薬剤も、メイン疾患のみならず、すべての該当疾患の患者の声を集めて分析出力できるようになる。また、個別薬剤レポートでは特に「患者と医師の会話」を重点的に抽出したい。「その薬剤について医師は患者にどう説明したか。患者はその説明を理解し納得できたか、疑問はなかったか。患者の質問に対し医師はどう答えたか」など、これまで密室の中で、当事者以外窺い知ることのなかった「医療現場の会話」を患者ドキュメントから可視化する。また薬の中止、変更、減量などについての意思決定ファクターやプロセスも可視化する予定である。もちろん、薬剤についての患者のパーセプション・マップやポジティブ・ネガティブ評価なども、インフォグラフィックスなどで分かりやすく可視化したい。

一方、これまでPDRのメイン出力を想定していた疾患単位の分析出力のほうは、主に患者ニーズ探索にフォーカスするようなイメージを持っている。米国FDAがPROなどで主張しているのは、今後、薬剤開発は患者ニーズにフォーカスして進められるべきだということである。薬剤のみならず医療機関、医療機器、医療保険、医療情報サービスなどの新規開発も、今後、患者ニーズ探索を起点として進められることになるだろう。これは他の産業分野のマーケティングではもうすでに「あたりまえ」のはなしだが、これまで医療分野では「あたりまえ」ではなく、マーケティングさえ確立されていなかった。ようやくこれから「あたりまえ」になろうとしているのだ。患者が自発的に作成し公開している闘病ドキュメントは、患者ニーズを知るうえで宝の山である。たとえば「乳がんの患者が困っていること、悩んでいること、探しているモノ・情報、等々」を知るうえで、闘病ドキュメントほど豊富な資料はほかに存在しないだろう。私たちは最新の技術を使って、これら患者ニーズを的確に抽出し、広く社会に提供していきたいと考えている。

Perspective、Distiller、X-Searchの三つからなるdimensions2.0。「レポート、トラッキング、検索」の三つの機能。ユーザーは「レポート」で患者視点アウトカムを理解し、日々の日常業務では闘病ユニバースで起きていることを「トラッキング」し、今すぐ「患者の声」を聴き参照する必要があるときは「検索」する。こんなふうなイメージで、ぜひ新しくなったdimensionsをプロフェッショナルな業務に活用してもらいたい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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