医師コミュニティの競争ステージはグローバルへ

WorldOne

前回エントリは予想以上の反響をいただいた。それだけ医師コミュニティに対する関心が高いということなのか。だが、今回のSermo買収劇の背景について、実はあまり前回エントリで触れてはいなかった。あらためてそれを手短に言ってしまえば、「医師コミュニティをめぐる競争ステージは、国内からグローバルへ移動した」ということだ。

Sermoを買収したWorldOneのコーポレートサイトのトップページには、”Global Reach”とスロガーンが大きく掲出されている。まさにこのスローガンが示すとおり、WorldOneは世界の医師へのリーチ拡大施策の一環としてSermoを傘下に収めたのである。

SermoのCEOであるティム・ダベンポートもまた今回の売却理由の背景として、「クライアント企業から医師へのグローバルなリーチを求められた」と述べている。Sermo首脳部は、自分たちがたとえ国内ナンバーワンであっても、高度化するクライントの要求によって自分たちの「一国性の限界」に気づかされたということであろうが、医師SNSをはじめ医師ネットワーク・ビジネスの競争ステージは、はっきりと国内からグローバルへ移動したのである。そのことを告げる今回の「買収劇」であった。

一方、今回の買収劇とほぼ同じ時期に、日本のエムスリーは「M3登録医師、全世界で100万人を突破」と発表しているが、Sermoを傘下に収め「全世界の医師パネル170万人」を豪語するWorldOneと、今後、「Global Reach」をめぐる熾烈な競争が始まるのであろう。

さて今年はじめ、このブログでは「QuantiaMD」日本語版を紹介し、あわせて医師コミュニティの現状を考察した。

QuantiaMDの場合、日本語版公開を見てもわかるように、国際展開という戦略で会員数拡大をめざしている。米国だけでは会員数の伸びはSermo程度で飽和するが、国境を超えて医師会員を獲得していけば「100万人の医師コミュニティ」だって不可能ではない。(「医師コミュニティの考察: SermoとQuantiaMDをめぐって」

一国内で10万人~20万人規模のコミュニティを作っても、それは所詮「特定少数・有限」であり、「不特定多数・無限大」のネットパワーを利用することはできない。少なくとも100万人以上の規模がないと、コミュニティベースのビジネスは難しいだろう。

今後、医師SNSをはじめ医師ネットワーク・ビジネスは、とにかく一定以上の「量」を、しかもグローバルに確保しなければ、ゲームにエントリーすることさえできなくなっていくだろう。そしてさらに、この傾向はやがて医療ウェブサービスの他の分野へ波及していくだろう。それを最終的に阻むものは国家の「制度と規制」であるが、医療ツーリズムをはじめとして、すでに始まった国境を越える医療サービスの流れを止めることは誰にもできないだろう。


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