事業領域の再考をめぐって

shinjuku_gyoen_lunch前回エントリで触れたが、現在、dimensionsで開発した技術をB2Cモデルへ転用した「乳がん闘病クチコミCHART」(仮)の実用化に取り組んでいる。できれば4月から運用を始めたい。考えて見れば、dimensionsは企画立案からシステム運用までほぼ2年かかったわけだが、ここで開発した技術は単にdimensionsというシステムにとどまるものではなく、さまざまな応用領域へ展開できるものである。

当初はあまりそんなことを考える余裕もなく、ひたすらdimensions(旧名dfc)の設計概要を固め機能を実装することで手一杯だった。それでも予定を大幅に超える時間を要したのは、このような未踏プロジェクトを進める以上、ある意味やむを得ないことだと思っていた。そして出来上がってみると、dimensionsという「ソーシャル・リスニング・ツール」が完成したというよりは、それ以上の大きな価値が実現できたのだとの感を次第に強く持つに至っている。

私たちが、dimensions開発の過程で取り組んだ技術は要約してしまうと以下の三点である。

  1. データ取得(クロール、本文抽出、日付取得、DB化)
  2. リスティング(キイワード抽出、集計、カテゴリーリスト化)
  3. バーティカル検索エンジン(新規エンジン採用、疾患ごとのバーティカル検索、メタデータによるフィルタリング)

いずれもきわめて基本的なものであるが、データ精度や処理速度を実用レベルに持ってくるのに随分苦労した。だがこれらの技術によって、私たちは闘病ユニバース上にある膨大な闘病ドキュメントをデータとして自由自在にハンドリングできるようになった。ここが非常に重要なポイントだ。dimensions自体も、これらの技術の組み合わせのうちの「一つのフォーム」ということにすぎない。つまり、これらの技術の組み合わせ方によって、闘病ユニバースからさまざまなアウトプットを取り出すことが可能になったのである。

当面はプロフェッショナル・ユースのdimensions、そしてコンシューマー・ユースのCHARTの二本立てとなるが、その他にも闘病ユニバースから、目的に応じてさまざまな形でデータを正確に取り出し集計することができる。たとえば、薬剤と製造企業ブランドごとの患者クチコミ・ランキング「Drug Billboard」なども作りたいと考えている。また病院のクチコミ・サービスは既にあるが、地図、闘病ブログと連動した「全国病院クチコミMAP」など従来とは違ったものを提供することもできるだろう。さらに「CHART」などを疾患ごとにスマホ・アプリ化することもあるだろう。入院患者などに取ってスマホは、非常に強力な情報武装ツールとなる。

これまで私たちは、dimensionsを開発し販売することばかりを考えてきたが、気がついてみるとより一層大きな事業領域が眼前にひらけていた。「闘病者の生の声とホンネを聴く」などリサーチ業務に収斂するようなサービスをイメージしていたが、これからはそれだけでなく、闘病者の生の声を社会に向け拡声配信し、闘病者に役立つサービスやコンテンツとして提供するという、一回り大きい事業イメージを描くことができるようになった。これらによって何が可能になるかといえば、それは文字通り「患者視点で医療を可視化する」ことが可能になるのだ。

基本機能をAPIで提供するか、コンテンツ・プロバイダーのような役割を果たして行くか、あるいは独自サービスで展開するか・・・・・。さまざまな選択肢が考えられる。だがまずは「CHART」からだ。

要するに、事業領域を製薬など特定の狭い業界周辺に限定する必要はなくなったのである。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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