EHRは医薬品情報配信の新たなチャネルになるのか?

このブログではEHRの話題はずいぶんご無沙汰だったが、オバマ政権誕生以来、米国では政府の強力な導入促進政策が功を奏して、EHRは急速に全米の医療機関に導入されつつある。

ところで普通EHRというと、これまで診療記録など、各種医療情報記録のためのデータベースということが主たる利用イメージであった。しかしEHRの普及が進むに連れ、せっかくほとんどの診療現場がEHRで結びつけられようとしているのだから、単なる記録用データベース以上の使い方をしても良いのではないか、という声が昨春あたりから起き、新しい模索が始まったのである。現在、政府FDA、製薬企業、EHRベンダー、ペイヤー、医療情報サービス企業などが、これら新しいEHR利用の研究に乗り出している。従来、EHRとはほとんど縁のなかった製薬企業などが関心を示し始めたのだ。

EHRの新しい用途として考えられているのは、診療現場へダイレクトに情報を配信する情報チャネルとしてEHRを利用しようというものだ。たとえば、FDAの各種規制情報や医薬品副作用情報の配信、製薬企業の医薬品情報配信やマーケティング・チャネルなどへの利用が検討されている。

製薬企業を例に取ると、診療時点において患者と症状に最適な医薬品情報やリスク情報あるいは処方箋プランと代替案などが、製薬企業の医薬品DBからダイレクト配信されるようなイメージが考えられている。医師の意志決定プロセスにダイレクトに参画しようというわけだ。これをさらに進めると、医薬品のアウトカム情報を診療現場からダイレクトに入手するようなことも可能かも知れない。だが、プライバシー問題などクリアしなければならない問題も多い。

さて、これらに関連してまず思い出されるのがPracticeFusionである。PractiseFusionの場合、EHRを広告配信チャネルとして利用していたのだが、なるほど医薬品情報などもEHRを介してジャスト・イン・タイムで配信できるし、診療現場のワークフローに医薬品情報配信を直結することも可能だ。

だが、そうなるとMRや各種ディテーリング・サービスなど従来の医薬品情報配信チャネルはどうなるのか?。EHRは診療現場で、しかも診療時点で利用されるだけに、その情報配信パワーは格段に強力であろうと思われる。

以上のようなEHRによる各種情報配信に関する具体的な動きとして、来月3月20日、21日フィラデルフィアで招待メンバー限定の”2012 PharmEHR Summit”が開催される。FDA、大手製薬企業、主要EHRベンダーなどの参加が決まっているようだ。

PHRも含め、どうやら私達は従来のEHRのイメージを根底から変えなければならない時期に来ているようだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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