ウェブ医療サービス時評 2012.2

AdverseEvent

2月に入ったが例年にない寒さだ。先月下旬から当方、痛風発作に見舞われ自宅蟄居状態が続いたが、ようやく回復。歩行リハビリ中。「アルコール・リハビリ」もする予定。

さて年明け早々、WebMDの経営が行き詰まり、トップが辞任するというニュースが伝わってきた。あの「WebMD」がである。「まさか!」と思ってニュースを読むと、近年ユーザー離れとスポンサー離れがかなり深刻になっていたらしい。当然スポンサー筋は製薬企業中心だが、特に特許切れでジェネリックが進出している薬剤のプロモーション費用をすべてカットされたらしく、これが収益構造を直撃したようだ。

また、医師コミュニティの代表格だったSermoもここへきてかなり苦戦している。昨年12月のアクセスデータを見ると月間ユニークユーザー数激減(このままでいくと月間1万を切る)。訪問ユーザーの平均サイト滞在時間は5分。大丈夫か?

WebMDやSermoの苦戦ぶりを見ていると、米国ウェブ医療サービス・シーンも大きく様変わりしつつあることが実感される。これらはすべて、私達にとって貴重な先行事例となる。どのようなタイプのサービスが、どのような要因によって頓挫するかを教えてくれている。

さて上図は薬品副作用情報サービスの“AdverseEvent” 。FDAの副作用DBのデータを、様々なフィルタリングを介して見やすくわかりやすく提供している。のみならず、最新副作用ニュースのアグリゲーション・サービスも付加されていて、ワンストップで各薬剤の副作用情報をすべて網羅できるという。

日本でもこのような薬剤の副作用データサービスは、あってもよさそうなのに実は存在しない。医療機関などで確認された副作用情報は、厚労省を経て独立行政法人医薬品医療機器総合機構に集約されているようだが、最新の副作用情報のデータベース化はされておらず、添付文書DB、PDFファイル、そしてメール(!)で情報公開されているだけだ。おまけに、このサイトは非常にわかりにくく、使いにくい。これでは、患者・消費者が最新の副作用情報を調べる助けにはまるでならないだろう。

日本の場合、民間サイトでも薬品添付文書DBサービスはあるものの、最新の情報や他の薬品との比較情報などをサポートするものはない。そう見てくると、このAdverseEventはありきたりのサービスに見えて実は非常に貴重な存在である。逆に、当然あって良いはずの消費者向けサービスがなぜ日本で存在しないのか。このあたりに、日本医療の特徴、あるいは特殊性というものの一端が現れているような気がする。

ところでこのAdverseEvent、より詳しい副作用情報を調べるには有料登録しなければならない。値段はプロフェッショナルが年間249ドル、一般消費者が年間99ドル。うーむ、副作用情報データベースを使うために、一般消費者が99ドル払うだろうか?ギモンだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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