dimensionsサービスイン。そして今後。

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日本初の闘病体験傾聴ツール”dimensions”(ディメンションズ)は、いよいよ今日からサービスイン。新しいデータが揃いつつある。まだ100%稼働には達していないが、これから徐々にフルサービス稼働へ持っていくことになる。

dimensions開発プロセスは当ブログでその都度触れてきているので、関心をお持ちの方は”dfc”や”dimensions”のタグが付いたエントリを拾い読みしていただければ、おおよそのことはおわかりいただけるだろう。ざっと振り返れば、一昨年暮れから昨年夏までおよそ半年で開発構想をまとめ上げ、昨年後半に基本システムを作り上げ、今年前半にデータ集計・改善と修正・デモをおこなった。

当初計画から見れば約半年遅れてしまったが、やはり前例のない未踏領域のサービス開発ということもあり、あれこれ暗中模索や試行錯誤があったことは否定できない。だが全体として開発プロセスを眺め渡してみれば、当初はぼんやり不分明な形をとっていたコンセプトやバリューや機能が、徐々に明確な姿を顕にしてきたと言えると思う。

dimensionsは闘病体験を医療関連固有名詞を含む事実から可視化している。そこで特徴的なのは、従来の「闘病記を読む」みたいな、個人が体験した事実を個人時間軸上にシーケンシャルに追跡するスタイルではなく、逆に固有名詞を軸に複数の闘病体験を切り出して見るという点にあると考えている。つまりストーリーや物語の呪縛から、固有名詞や医療事実を解放し、闘病体験について今までにない見方を提示できるところが新しいと言えるだろう。固有名詞や事実は物語の素材ではなく、医療の現実を構成する自立したデータであり、それらの出現場所と出現回数を特定することによって、医療の現実や、これまで不可視であった消費者の医療ニーズを顕在化させることができる。

私たちは、TOBYOプロジェクトの初期段階で闘病ユニバースという仮説をつくりあげた。TOBYOはこの闘病ユニバースのインフラツールをめざしているわけだが、ここで重要なのは、闘病ユニバースのどこにどんな闘病体験があるかを特定している点である。いわゆる「構造化とオーガナイズ」だが、これは今のところ機械では判断できず、人間が一つ一つサイトを見ていくしかない。dimensionsはTOBYOが可視化したデータに基づき、さらに固有名詞とそれを含む事実でもって闘病ユニバースを細かく可視化している。つまりデータの粒度が「サイト→固有名詞・事実」へと細分化されたわけである。サイト単位で「闘病記(個人の体験)を読む」のではなく、「固有名詞と事実」単位で「医療の集合体験(医療の現実)を把握する」。これがdimensionsが提供するサービスである。

だが、固有名詞と事実だけが意味を持ち、サイトが無意味になったわけでもない。サイトはその固有名詞と事実の信憑性を担保しているからだ。ここが他のブログリサーチなどとは違うデータの見方だと思う。

さらに個人の時間軸上を離れた固有名詞と事実は、闘病ユニバース全体の絶対時間軸(歴史)上にプロットすることができるだろう。これは闘病ユニバースの全歴史を、固有名詞と事実によって可視化することに他ならない。巨大なスプレッドシートを想起してもらいたい。縦軸に数千件の固有名詞が並び、横軸は月単位の時間軸である。それぞれのセルにはある固有名詞のある月の出現回数が入る。セルをクッリクすればその月の固有名詞の全出現リンクリストが表示される。このような巨大年表がdimensionsのデータ原簿となり、特定の固有名詞が闘病ユニバースのいつどこに何回出現するかを素早く参照できるようになる。これは今回、実装を見送ったが早急に実現したい機能である。

以上がdimensionsのディスティラー(Distiller)によって提供されるサービス。そしてX-サーチであるが、TOBYOが収録する約千件の全病名でのバーティカル検索が可能となった。「乳がん、悪性リンパ腫、双極性障害」など病名を指定することで、たとえば乳がん闘病者だけの体験を検索することができる。従来、「TOBYO事典」で病名指定なしの闘病体験バーティカル検索サービスを提供してきたが、病名単位での検索が可能となった。これでたとえば乳がん患者に限った医療ニーズなど、病名ごとの医療ニーズを探索することができる。

dimensionsが当面提供するサービスは以上のようなものである。そして以上を実現した次の段階は、固有名詞と事実にともなう「感情」を可視化することになるだろう。

ところで今回の開発でクラウド仮想サーバを使ってみて、処理スピードが遅いことがわかった。TOBYOサイトと検索エンジン「TOBYO事典」は米国のサーバに設置してきたが、dimensionsは日本のクラウドサーバに開設した。日本だからレイテンシなど解消されると期待していたが、サーバ自体のデータ処理スピードが遅いようでがっかり。dimensionsのような大量のデータ処理には向いていないのか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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