医療を変えるネット発想

自立分散協調
先週、患者SNSをめぐる考察をポストした。海外でも日本でもここ3~4年の間に多数の患者SNSが登場したが、一部を除き必ずしも順風満帆とは行かないよ うだ。この間、さまざまなチャレンジによってこの分野の経験は蓄積され、いくつかのポイントが徐々に明らかになりつつある。果敢な挑戦は続けられており、 今後も新しい挑戦者が登場するだろうが、既に明らかになっているいくつかの諸点を立ち止まって整理・検討することも必要だ。

米国で第一回Health2.0コンファレンスが開催されてから、この秋ですでに三年が経ち、そろそろ中間総括をする段階に来ているのかも知れない。だが、 インターネットの可能性を医療分野で活用する試みは、ようやくまだ緒についたばかりであることも事実だ。各種SNS、掲示板、バーティカル検索エンジン、 PHR等、たしかに一応出そろって来てはいるが、ネットを医療に活用する可能性はこの程度で終わるものではない。今後これから、誰も考えつかなかったよう な革新的なサービスがきっと登場するに違いない。

最近、「医療からネットを見るのではなく、ネットから医療を見る」ということを再三言っているわけだが、革新的サービスを創造するためにどうしてもそのよう な発想が必要であるからだ。従来の医療を構成する様々な構成物、関係性、機能、発想などを所与のものとして、それらの代替物を単にネッ上に再現するだけであるなら、それは従来の医療を何も変えることはできないだろう。従来にないネットという新しい空間を介して、はじめて医療にかかわる様々なことが変わる可能性を獲得できるのだ。

かつて、インターネットは「自立、分散、協調」システムであると説明された。このようなネットの特徴を深く理解し、医療に持ち込み、これまでにないまったく新しいサービスを創造するのは、おそらくこれまで医療に深く関わってきた関係者諸氏ではないだろう。やはりそれは、ネットの可能性を熟知した若いデジタ ル・ネーティブ達だろう。若い人達は、権威主義が跋扈する医療という「伽藍システム」を恐れる必要も、拝跪する必要もない。遠慮することなく、ネットから 医療を見て、患者・消費者の観点に立脚し、ネット的な発想を自由に医療に持ち込んでチャレンジすべきだ。老婆心ながらそんなことを強く希望したい。

ここ三年にわたる世界的なHealth2.0ムーブメント。だが、これは医療を本格的に変革する時代が到来したことを告げる端緒に過ぎない。ここからいかなる成果を実現するかが問題なのだ。

靡不有初、鮮克有終  (「詩経」)
(初めあらざることなく、よく終わりあることすくなし)


三宅 啓  INITIATIVE INC.


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