シャガールからピリニャークまで

Shagall

今日は妻と秋の墓参へ行った。父が胃がんで亡くなって早4年。いまだに全摘手術そして縫合不全など一連の治療過程を思い返すと、医療機関に対する一抹の疑念が頭をもたげてくる。だが、もうすでに終わったことである。そしてその後、すべての闘病体験を可視化し検索可能にするTOBYOプロジェクトに着手することになった。これも何かの縁か。

墓参の前に、上野の東京芸術大学美術館で開かれていたシャガール展を見た。今回の展覧会はシャガールのみならずゴンチャローヴァ、マレーヴィチ、プーニー、カンディンスキーなどロシア・アヴァンギャルド・ムーブメントも合わせて紹介するものであった。ゴンチャローヴァの鮮やかなオレンジと深いブルーの印象的な色彩配置、マレービッチの「アルヒテクトン」と呼ばれる仮想建築モデルなど面白かった。だが、今回再認識したのはシャガール作品の情報量の多さである。様々なディテールが重層的に書き込まれており、一枚の絵が多面的な表情を見せ見飽きることがない。妻は一番最後の展示場が気に入ったようだが、なるほど充実した作品が多いのが最後の部屋だった。

帰りに池袋LIBROに立ち寄り、展覧会の影響もあってか、目についた「破滅のマヤコフスキー」(亀山郁夫)を手にとってページを繰った。ソ連崩壊後、ようやくロシア・アヴァンギャルドをはじめ革命期のロシア芸術を冷静に評価できる時が来たのかも知れない。資料も豊富に発掘されているはずだ。そんなことを思いながら平積みされた本の表紙に目をやると、「機械と狼」(ボリス・ピリニャーク)の復刻版があるのに気がつき驚いた。今後、ピリニャークなど革命期ロシアの実験的文学が本格的に再評価されることを期待したい。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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