医療解放構想

locust

梅雨明けはまだか。夏を待つ週末。でも梅雨が開ける前にやることがある。蝉どもが喧しく鳴き始める前に静かに音楽を聞くこと。ここ石神井公園の夏は蝉の声で充満し、スピーカーから出てくる音の高音部が聞き取りにくくなるほどだ。特にドラムスのハイハットの切れがマスクされ、リズムのタイトさが劣化する。蝉が来る前に音楽を聞かねばならないし、その後は蝉が去るまで、秋まで待つしかなくなる。というわけで音楽を聞き込む週末になった。

そして昨日は選挙。今回の参院選はとにかく盛り上がりにかける選挙だった。いつのまにかなんとなく始まり、そして大方の予想通りの結末を確認するだけで終わった。だが、民主党の政治家というのはどうしてこうもやり方が稚拙なのか。長年の野党体質が染み付いてしまったせいか、権力行使の局面でぎこちなくあたふたするだけのように見える。「柄に合わない」ことを無理にやっているように見える。その場逃れの弥縫策しかないのか。今必要なのはビジョンドリブンな政策を提起できる政治家だが・・・・・。

さて、昨日の朝日新聞beを眺めていたら、次のような記事が目に入った。タイトルは「医師の技術や知識を人々に解き放ちたい」というもの。

「よく医療崩壊と言われますが、少しのけがでも救急車を呼ぶのは、知識が乏しくて安心できないからという面もある。技術や知識を医師の領域に抱え込むのではなく、解き放って、人々が自分で病気の判断や予防ができるのが理想。例えば一人ひとりが自分の医療データを持ち、iPadなどを操作して判断できるようになれば、不安は大幅に解消される。私は「医療解放構想」と言っていますが、技術の進歩はそうしたことも可能にしていくと思っています。」
(「医師の技術や知識を人々に解き放ちたい」神戸大学附属病院医師 杉本真樹、朝日新聞be7月11日「フロントランナー」)

なるほどと感心した。この「医療解放構想」という発想は素晴らしい。たとえばグレッグ・イーガンの作品の端々に提示される未来医療のイメージなんかと、どこか通じるところがあるように思った。と同時に

「世界最大の医療機関。それは母親である。」

という言葉も思い出した。これは意外にもかつてビル・ゲイツが語った言葉だが、たしかに医療の担い手は専門家だけではなかったはずだ。従来から風邪やちょっとした傷のケアは家庭内で行われてきたし、この「医療解放構想」のようなビジョンのもとに、これからもっと活発に行われていくのではないだろうか。その際、当然、ネットが果たす役割は非常に大きいはずだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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