医療情報システムと消費者・患者参加

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米国政府は医療IT化刺激策“HITECH Act”で病院のEHR導入を促進しようとしているが、最近これに関連する広報活動について、PR代理店Ketchumと二年間で2,600万ドルの契約を結んだ。昨年来、”HITECH Act”やEHRの「意義ある利用」について、政府や医療IT業界で盛んに議論が行われてきたのだが、一方では、これら議論から消費者や患者がほとんど除外されていることが問題視されるようになってきている。各種調査を見ても、消費者や患者の医療IT導入問題に対する認知や関心はかなり低いことがあきらかにされている。今回の契約は、このような現状に対する広報活動の必要性が認識されたためだとされている。

先月ワシントンDCで開かれたHealth2.0コンファレンスにおいても、いくつかの患者支援団体から、政府の医療IT導入計画に消費者・患者が参加することの必要性が強く指摘されたようである。これら「消費者、患者の不在」という批判は、従来から医療機関で進められてきたEMRやEHRの導入にも向けられはじめている。これまでこれらシステム導入の計画段階で患者視点が盛り込まれることはなく、また出来上がった医療情報システムから患者向けサービスが提供されることもほとんどなかったわけだ。

だが、これらのニュースを読みながら首をひねったのは、EMRやEHRなどは医療機関のいわば基幹業務システムであり、はたして「消費者・患者の視点」というものが必要なのかという素朴な疑問からだ。PHRなら話はわかるのだが。でもよく考えてみると、オバマ政権の”HITECH Act”は医療機関のEHR導入に政府が補助金を出すというものであり、税金がかんでくるのだから、納税者のニーズを盛り込み理解を得る努力を払うのは当然だろう。またこの”HITECH Act”では、特に「IT導入による米国医療の品質向上とコストダウン」がめざされており、そのことの社会的な理解形成も必要となるわけだ。

では日本ではどうか。日本では医療機関の情報システムに、患者会や支援団体は積極的な関心を持っているだろうか。そう考えると、あまりそのような気配はないような気がする。だがこれから消費者参加型医療というものを構想するとすれば、医療情報システムに対しても消費者・患者の何らかの「参加」が必要になってくるのかも知れない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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