データベース進化とウェブサービスの変遷

DB_Intention

米国のビジョナリーとして知られるジョン・バッテル“Searchblog” に先週“The Database of Intentions is far larger than I thought”と題するエントリがポストされたが、そこに興味深いチャート(上図)が掲出されていた。「意図のデータベース」と名付けられたデータベースが「クエリー」からはじまって「ソーシャルグラフ」へ、さらに「状況更新」へ、そして「チェックイン」へと進化してきた様子がわかりやすく提示されている。それぞれの段階における「シグナル」や主要プレイヤーも示されており、「データベース」の概念がGoogleに代表される「検索クエリー」を起点に、今日、バーチャルとリアルが統合される「チェックイン」という場所へまできていることがわかる。

ところが今週になってジョン・バッテルはこのチャートに変更を加え、クエリーの前に「購入」(Purchase)の概念を置き、シグナルに”What I buy”を、主要プレイヤーにはamazon、eBay、Walmartを書き入れた。たしかに「検索クエリー」時代の前にはドットコムバブル時代があり、eコマースが全盛をきわめていたからこれは不自然ではない。

ともあれ修正されたチャート全体を遠目に見渡してみると、全体として「あらかじめ明確にわかっているもの」から「あらかじめわからない不確かなるもの」へと変化して来ているといえるだろう。初期においては「自分が買いたいもの」や「自分が欲しい情報」はあらかじめはっきりとわかっていたのだろうが、そのうちにだんだんと「自分は何者であるか」とか「今何をしているか」とか「自分はどこにいるのか」など、「あらかじめ知りようがない不確かな問い」に対応しなくてはならなくなってきている。つまり「自分は何者で、今どこにいて、何をしているのか」を知るための、不確かさに答えるためのサービスが必要になってきている。このままいくと「自分はなぜ生きているのか」という問いが出てきても不思議ではない。その時、このような問いに答えられるサービスやデータベースは果たして存在するのだろうか。そんなことを思った。

いずれにせよ、ジョン・バッテルはデータベースの概念を従来より拡張している。通常、私たちが考えるのはせいぜい「クエリー」を司る検索エンジンくらいなのだが、今日のオーグメンテッド・リアリティなど「リアルとバーチャルの統合」に至るまでデータベース概念で理解しようとしている。そしてそのことによってウェブ進化を理解しようとしている。このことをじっくり考えてみたい。教えられるところの多い生産的なエントリだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


データベース進化とウェブサービスの変遷” への1件のコメント

  1. ピンバック: links for 2010-03-10 « links and tweets

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>