変化し始めたPHR像について

keas1002

先月、RevolutionHealthは2月いっぱいでPHRサービスを停止すると発表した。このことは米国の医療ITコミュニティで少なからぬ波紋を呼んでおり、医療情報システムの中でもっとも注目されてきたPHRの将来を不安視する議論も出てきている。

だがRevolutionHealthのPHRは、ユーザーが自分の医療情報を手作業で入力するような「DIY型PHR」であり、結局、このようなモデルのPHRがワークしないことが実証されただけであるとの見方が多い。もともと、煩雑さがデメリットであることはわかっていたというわけだ。事実、RevolutionHealthでPHRを利用していたユーザー数は、わずか数百人に過ぎなかったと発表されている。

現在、個人医療情報を蓄積しているのはたとえば医療機関のEHRだが、GoogleHealthやHealthVaultなど新しいモデルのPHRはこれらからデータを入手し、ユーザーが自分で入力することはない。しかしGoogleHealthやHealthVaultなどのPHRが、今後順調に発展していくかどうかについても、最近これを疑問視する見方も出てきている。各種世論調査によれば、米国においてPHRは消費者にほとんど認知されておらず、またその必要性についても肯定的な意見は少ない。これらから、いわゆる「Direct-to-Consumer」型PHR市場の成立は容易ではなく、相当時間がかかるのではないかと見られはじめている。

また今後、PHRとEHRの違いは徐々になくなり、「EHRの消費者向けインターフェイスだけがPHRと呼ばれる」との見方もある。一方、Health2.0コミュニティでは「アンプラットフォーム」というコンセプトが提起されているが、この主唱者であるマシュー・ホルトは、「データ・ユーティリティ・レイヤー」へ医療機関や検査ラボが保有する個人医療情報が流れ込み、そこから様々なアプリケーションがデータを取り込み、最終的に「機能」をユーザーに提供するような将来像を語っている。

PHRも従来イメージされていた単なる「データを保存蓄積するPHR」ではなく、ユーザーのためにデータを解釈し、ユーザーの医療意思決定を助けるような「機能的なPHR」が必要だというわけである。マシュー・ホルトは、その実例として「keas」をあげている。昨秋登場して話題になったアダム・ボズワース率いる「keas」だが、新しいPHRモデルの方向性を示していると指摘されている。

これら一連の議論を眺めていると、従来からあったPHRイメージがここへ来てかなり揺らぎ始めていることがわかる。だが「医療データを解釈し、意思決定を助ける」というような「機能」は、限りなく医療行為に近接していくことになるのではないか。そしてこのような医療情報サービスの進化は、将来、医療提供者の役割さえ変えていくことになるのかもしれない。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>