次世代医療についての考察

winter_2010

ウェブは患者の医療参加を促進する土台となるだろう。ブログやtwitterを使用して、患者は自らの医療体験や知恵を社会に向けて簡単に配信することができる。そして公開された事実や闘病ティップスに関するデータは、社会の各セクターで共有され、医療にフィードバックされ、最終的に医療を変えて行く・・・・。そのようなイメージを明確な社会的ビジョンとして具現化することが、今、必要になっていると思う。

だがこの日本においては、そのような「イメージ」を描くことがまず困難であるという現実がある。「インターネットによって医療を変える」という声は、すでに10年前から聞かれたのであるが、では具体的に何がどう変わるかまでは考察されてこなかったのである。せいぜい遠隔医療など通りいっぺんの技術構想で、従来医療の延長線上に「未来医療」が語られるのが関の山であり、本質的な医療変革を奈辺に求めるべきかについては誰も語ってこなかったのではないか。あるいは「情報の非対称性」というクリシェでお茶を濁し、そこから先へ議論が進むことはなかったのである。

他方、「患者様中心医療」などスローガンだけの「患者主義」があり、また医療を消費者に「啓蒙」するような様々な団体やグループもあった。これらはパターナリズム(父権主義)の変種であり、基本的に患者の位置づけを変えるものではなかった。

米国で始まったHealth2.0ムーブメントは、ウェブの可能性から出発し、さらに参加型医療という次世代医療像やe-Patientsという新しい患者像を提起するに至っている。日本においても、新しい医療像や患者像を議論していくことが必要だと思う。そのためには、医療界の外部がもっと医療について発言すべきだ。たとえばマーケティングや経営など、すでに他の産業セクターで確立した理論や語彙で医療を語ってみるべきだ。あるいは、ウェブでエンパワーされつつある新しい患者像と、現状の日本医療の間に横たわる「Chasm」を直視してみてもよいのではないか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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