新春のブラック・スワン

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昨年読んだ本の中で最も印象に残る一冊は、間違いなくタレブの「ブラック・スワン—-不確実性とリスクの本質」(ダイヤモンド社)だった。かつて「ガウス曲線のベル型カーブを頭に生やし」て仕事をしていた自分にとって、この本はまさに「ベル・カーブ、この壮大な知的サギ」(同書第15章)という事実を「これでもか!」と突きつけるものであり、そこに爽快感があった。

「ブラック・スワン(黒い白鳥)」とは何か?

むかし西洋では、白鳥と言えば白いものと決まっていた。そのことを疑う者など一人もいなかった。ところがオーストラリア大陸の発見によって、かの地には黒い白鳥がいることがわかった。白鳥は白いという常識は、この新しい発見によって覆ってしまった。
「ブラック・スワン」とは、この逸話に由来する。つまり、ほとんどありえない事象、誰も予想しなかった事象の意味である。タレブによれば、「ブラック・スワン」には三つの特徴がある。一つは予測できないこと。二つ目は非常に強いインパクトをもたらすこと。そして三つ目は、いったん起きてしまうと、いかにもそれらしい説明がなされ、実際よりも偶然には見えなくなったり、最初からわかっていたような気にさせられたりすることだ。 (同書「内容紹介」より)


ところで、まさかそのブラック・スワンを石神井公園の池で見ることになろうとは、夢にも思わなかった。先週、突然、石神井池に二羽のブラック・スワンが現れ、冬の池面を悠然と泳いでおり(上写真)、それを聞きつけた近隣の人々が一目見ようと毎日押しかけているのである。いったいこの二羽は、どこから飛来してきたのだろうか。まさか南半球からではあるまい。そうすると東京近郊の動物園などから逃げ出して来たのか?はたまた、ペットとして飼育されていたものが「飼育放棄」の憂き目にあい、「捨てブラック・スワン」と化して石神井池をさすらう悲哀を味わっているのか?そのあたり一向に定かではないが、とにかく新春にブラックスワンとは・・・春から縁起が良いのか悪いのか、思い悩むところである。ちなみに当方の女房など、早速、二羽のブラック・スワンに「スラリとヒラリ」と名前まで付けてしまった。

そしてさらに、昨年のように白鳥が飛来してくれば、白鳥と黒鳥をあわせて鑑賞できる。まさに一石二鳥。お楽しみはこれからだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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