集合知によって医療を患者参加型医療に変える

 Gyoen_0912

TOBYOプロジェクトは、国内最大の闘病体験データベースに成長した。このように大量の闘病体験ドキュメントが可視化され利用可能になったのは、おそらく史上初であろう。このデータはまず闘病者に利用してもらいたい。そのためのツールとして、TOBYOはバーティカル検索エンジンを公開している。次に政策立案者、保健行政、医療機関、学会、研究機関、医療関連企業等にも活用してもらいたい。そのためにTOBYOは、これらのプレイヤーが利用しやすい形での情報提供サービスを考えている。

TOBYOプロジェクトの三つのビジネス・レイヤー」でも説明したが、これらプロフェッショナル・プレイヤーに対する情報サービスはマーケティング・レイヤーに位置づけており、闘病体験データベースに基づく「リサーチ&コミュニケーション」事業を想定している。TOBYOプロジェクトはまず「医療マーケティングのデータインフラ」という役割を果たしたいのだが、それだけでなく、一種の研究機関やシンクタンク的な役割も目指して行きたい。

いずれTOBYOプロジェクトは「ネット上にある闘病体験ドキュメント」のほとんどすべてを可視化するようになるだろうが、このように空前の規模で集まった闘病者の生の声を、医療評価、政策評価、制度設計、製品&サービス開発、医学研究などに活用することが考えられる。そのために、たとえば調査研究レポートのような定期刊行物(有料)を検討している。これは闘病者・消費者の声を特定テーマに即して収集分析し、闘病者・消費者の医療ニーズを広く社会に知らしめていくものである。

TOBYOは闘病者・消費者の生の声を、医療界、行政、企業等に伝えたい。たとえば疾患ごとの患者ニーズを分析することが可能である。乳がん患者のニーズを、TOBYOなら1200件をこえる乳がん体験ドキュメントの分析によって報告することができる。たとえば高額医療費制度に対する評価を、実際に受給した闘病者のドキュメントから分析することができる。抗がん剤の副作用実態を、TOBYOでは実際の服用者ドキュメントから分析することができる。全国各地の拠点病院の評価を、TOBYOなら実際に受療した闘病者の声から分析報告し、レーティングすることも可能である。

大量にネット上に蓄積された闘病者の集合知を活用することによって、医療を闘病者・消費者ニーズから見つめ直し、患者参加型医療に変えていくことができる。

これがTOBYOプロジェクトのビジョンである。このようなビジョンを持ったTOBYOの運営組織体だが、徐々に調査研究機関のようなイメージが固まりつつある。ここから先は、当方だけでなく様々なパートナーとの共同作業が必要だと考えている。昨年2月のアルファ版公開以来、新宿御苑のオフィスにこもって、延々データ収集と検索エンジン開発に取り組んできた。いわば「ひきこもり&蟄居型ベンチャー企業」(?)だったが、その時期は終わったのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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