ClevelandClinicのHealth2.0戦略

先週、MayoClinicのソーシャルメディア戦略のスライドを紹介したが、このほどMayoと並ぶ米国のトップ医療機関であるClevelandClinicのHealth2.0戦略スライド「Health 2.0は、どのように医療業務と医学研究を作り直すか」が公開された。なおこのスライドは、オランダで開催されたHealth2.0コンファレンス「Reshape 2009」で発表されたもの。

このスライドを見て、これまでWeb2.0テクノロジーの医療分野への応用を啓蒙的に語ることがこの種のプレゼン・スライドの主流であったのだが、それがより実践的な課題に落とし込まれてきていると感じた。米国やヨーロッパの医療機関では、ここ二三年の間にHealth2.0分野の実践経験が相当積み上げられてきているのではないかと思われる。このスライドでも、患者に医療機関が有力なソーシャルメディアサイトやその有効な使い方を教育することが、医療機関が提供する医療サービスの一環であることが、何の不自然さもなく語られている。

患者、消費者を取り巻く情報環境がウェブを中心に急激に変化する中で、医療もそれらに対応していかなければならない。このような問題意識から、欧米の医療機関はHealth2.0を実践的な課題としてとらえ、積極的に取り組もうとしている。闘病者を挟んで、医療界とウェブ医療サービスが画然と分けられ、あるいは対峙するという従来の図式は崩れ、医療界とウェブ医療サービスが共同して高品質な医療を提供しようとしているのだ。医療機関は何から何まですべて抱え込む必要はなく、特に医療情報サービス分野はPHRやソーシャルメディアなどにまかせ、むしろこれらの有効な使い方をユーザーに教育するようなサービスをしていくことになる。

病院が患者に示す治療計画の中に、必ずPHRなどウェブ情報サービスの利用メニューを盛り込むことが、これからどんどん進むのではないだろうか。これまで医療現場とウェブ医療情報サービスは、あまり接点を持つことはなかった。だが次世代医療では、これら両者はシームレスで一体不可分なサービスへと、むしろ積極的に統合されていくのではないか。その最初のステージは、どうやら「医療現場とPHRの統合」になりそうだ。このスライドを見ながら、そんなことを考えた。医療機関は従来の物理的な「医療サービス拠点」という固定観念から早く脱却し、「ネットワークとそのエンドの消費者まで含めた医療サービス」という統合的な全体イメージを描き直す必要があるのではないだろうか。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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