次世代ウェブ医療サービス登場!: keas

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6日付NewYorkTimesは、アダム・ボズワース氏率いる「keas」のローンチを紹介している。アダム・ボズワース氏がGoogleHealthプロジェクトから離脱すると同時にGoogleを去り、すでに2年が経過した。これまでのボズワース氏の業績から見て、かならず画期的な医療サービスを開発してくれるとの期待は大きかったが、登場した「keas」はこれら期待に応え、まさに次世代ウェブ医療サービスのあり方を具現化するものである。

これまでのウェブ医療サービスは、さまざまに雑多なスタイルはあれど、おおむね「医療情報サービス」というくくり方で一括できるものであった。つまり「医療情報」をどのようにユーザーに提供するかをめぐり、提供方法のバリエーションと便益性を競うものであった。そしてここにおける「医療情報」とは、あくまでも「一般的な医療情報」のことであった。疾患情報、薬剤情報、治療情報、医療機関情報など多岐に渡るとはいえ、これらはあくまで一般化され抽象化された情報である。ここで欠落しているのは個別性であり具体性であり、さらに言えば特定個人についての情報である。だが闘病者が求めているのは、たとえば「乳がん」という一般医療情報ではなく、本当は「自分の乳がん」に関する個別情報なのだ。

闘病記など闘病ドキュメントが闘病者の間で広く利用されているのは、それらが一般的な医療情報ではなく、あくまでも「個人が具体的に体験した情報」という個別性を持った情報であるからだ。もちろんそれは「自分の乳がん」についての情報ではないが、しかし「自分と年齢や症状の似た人の体験」という近似性をもっている場合は、一般的な医療情報よりもインティメイトで有用な情報になるのだ。

「keas」が提供するものは一般的な「医療情報」ではなく、特定個人の健康保持のための具体的な「知識」である。この間、GoogleHealthやHealthVaultなどPHRの出現によって、個人医療データを一カ所に蓄積することが可能となった。だが、これらのデータが何を意味し、その結果どう行動すべきかという「知識」が提供されなければ、ユーザーは自己の健康改善を具体的に進めることはできない。「keas」はPHRに蓄積された個人医療データを使ってそれを分析し、ユーザー個人にとって最適なケアプランを提供する。つまり新たに出現したPHRというプラットフォームを活用し、そこに蓄積されたデータを「知識」化するというところに「keas」の新しさがあると言えるのだろう。

NewYorkTimesの記事は次のように結ばれている。

長期的には、アダム・ボズワース氏は「keas」が一種の市場に進化していくことを望んでいる。そこでは医療専門家が売り手であり、自分に最も合うアドバイスを求めているコンシューマーが買い手になる。「私は、これはビッグアイデアだと思っている。もしもこれがワークすれば、医療に消費者主義を持ち込むことを助けるからだ」と彼は言う。

アダム・ボズワース氏が言うこの「市場」とは、まさに「バザール」のことだと思った。「keas」はネット上の医療バザールを目指すプロジェクトなのだ。そこにこのプロジェクトの本質的な新しさがあるのだ。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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