新しいファンドレイジング手法: ドネーション・ミュージック


去る7月1日から、ACジャパン(旧公共広告機構)の「国境なき医師団」支援キャンペーンCMがTV放映されている。このテーマソング「BEYOND THE BORDER」が9月30日からドネーション・ミュージックとしてネット配信されている。ドネーション・ミュージックとは楽曲をダウンロード購入した際、コストを差し引いた収益金を寄付する仕組みだ。収益金は「国境なき医師団」に全額寄付される。今回のキャンペーンでは複数のミュージシャンやアーティストの参加が予定されており、今後ドネーション対象作品は増えるようだ。このキャンペーンを企画運営しているのは電通ソーシャルデザインエンジン。

クリック募金をはじめ、非営利団体のファンドレイジング(資金開拓)手法がさまざまに開発されてきているが、今回のドネーション・ミュージックもその一環と考えてよいだろう。当方のTOBYOプロジェクトも目下、資金還流スキーム作りに取り組んでいるのだが、これらファンドレイジング手法を採用することになるし、今回のドネーション・ミュージックのような方向性は、スキームを考える際大いに参考になる。

もともと私たちの「イニシアティブ」という会社は、公共領域で役立つ仕事に取り組もうという発想から生まれた会社である。社名「イニシアティブ」も、「パブリック」という問題をはっきりさせようとハンナ・アーレントの著作を読んだときに、たまたま目に付いた言葉から取られている。NPOでもよかったのだが、それよりも株式会社で挑戦したかった。起業後、さまざまなテーマに取り組んだが、結局、Health2.0とTOBYOに行き着いたのである。そして考えてみれば、このTOBYOプロジェクト自体が、当初私たちが目指していた「公共領域で役立つ仕事」そのものであることに気付いたのである。

これからTOBYOプロジェクトは、パブリック事業という立ち位置を一層明確にしていかなければならないと考えている。そうなると現株式会社イニシアティブは、いわばFS(Feasibility Study)会社という位置づけになり、TOBYOは今後パブリック事業運営にふさわしい組織体へ移管することになるだろう。またこのことによって、TOBYOプロジェクトのいくつかの懸案が解決することにもなるのだが、それはまた後日説明する機会があるだろう。

TOBYOはまだ「ベータ版」の表示を外していない。もちろん「Perpetual β」という意味合いも込めているのだが、一方ではFS段階のテスト運用という現状を表してもいるわけだ。来年春にはこの「ベータ」表示を外し、機能面もビジネススキーム面も新たに固め直して、名実ともにTOBYOは本格稼働することになるだろう。

三宅 啓  INITIATIVE INC.


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