急速にクラウド化する医療情報システム

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EHR認証問題に端を発する「EHR1.0批判」は、HHSによる「意味ある利用」による認証基準策定へと行き着いたわけだが、これら一連の動きを見て、旧来のIT企業をはじめテレコム企業からパソコンメーカーにいたるまで、雪崩をうってEMR・EHRのクラウド・コンピューティング化に着手し始めた。医療情報システムのクラウド化は、最早、誰にも止められない大きなうねりとなって医療IT業界を席巻しつつある。

9月10日のNewYorkTimesによれば、GE、IBM、Dell、VerizonなどからEHR専業各社に至るまで、EMR・EHRのクラウド化構想が最近矢継ぎ早に発表されている。従来からEHRシステムを供給してきたGEは、特に小規模医療機関のニーズが「より簡単に、より安く」へシフトしていると認識し、来年早々にクラウド版EHRをリリースするとアナウンスしている。IBMはこれまでEHRシステムを供給していなかったが、やはり小規模医療機関を対象とするクラウドEHR市場への参入を表明している。テレコム企業Verizonは医療IT企業と組み、今後数カ月のうちにクラウドEHRをリリースする。

従来、EHRは厳格な「セキュリティ、プライバシー、信頼性」など諸基準を満たすことが求められてきたが、これらを満たすITベンダーの「完全無欠システム」はコスト高で複雑で使いにくいとの悪評が高かった。New England Journal of Medicine誌によれば、米国において、2008年時点でEMRやEHRを利用している医師は全体のわずか17%にすぎず、この原因がITベンダーが供給してきた「EHR1.0」にあるとの指摘は徐々に増えてきている。

今後、EHRなど医療情報システムのクラウド化が進むことは間違いないだろうが、そうなるとこれまで「ブルーオーシャン」であったクラウドEHR市場は、一挙に競争激化の様相を呈することになる。PracticeFusionの「無料EHR」のように際立った特徴を持たなければ、生き残りは難しくなる。

三宅 啓


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